キヤノンMJのサイバーセキュリティに関する研究を担うマルウェアラボは、最新の脅威やマルウェアの動向の情報収集および分析を行い、セキュリティ対策に必要な情報を「マルウェアレポート」として毎月定期的に発行している。このたび、2019年上半期に検出されたマルウェアについて分析したレポートを公開した。
2019年上半期マルウェアレポートのトピック
以下に、レポートのトピックを紹介する。レポート(PDF)は、ESETのWebサイトからダウンロードできる。
・2019年上半期マルウェア検出統計
2019年上半期に日本国内で最も検出されたマルウェアは、JS/Danger.ScriptAttachmentで、検出数全体の12.3%を占め、2019年は多数の攻撃が確認されている。日本の芸能人の名前が件名に含まれていることから、日本のユーザーを狙った攻撃と考えられる。
・Emotetの感染を狙ったばらまき型メール
Emotetはバンキングマルウェアの一種で、追加のモジュール(機能)をダウンロードすることで、ネットワーク内で感染を拡大したり、メールの情報を窃取したりすることにより、周囲のPCやネットワークに影響を及ぼす。
主にメール経由で侵入し、添付ファイルやメール本文内のリンクからダウンロードしたファイルを実行することで感染する。感染を狙ったばらまき型メールは、昨年11月に日本で確認されて以来、2019年上半期も複数回ばらまかれたことが確認されている。
・GandCrabの終焉
2018年初頭に登場して以来、継続的に観測されているGandCrabは2019年上半期に日本国内で最も多く検出されたランサムウェアで、このランサムウェア感染を狙ったばらまき型メールによる攻撃を、ESETでは“Love You”malspam campaignと呼んでいる。
2019年5月末、突如GandCrab作成者は、サイバー犯罪者向けの提供サービスをやめることを発表した。このトピックでは、GandCrabが流行した要因や攻撃事例について解説する。
・圧縮・展開ソフトウェアの脆弱性を悪用したマルウェア
2019年2月、多くの圧縮・展開ソフトウェアが利用しているライブラリUNACEV2.DLLに脆弱性(以下、本脆弱性)が発見され、その脆弱性を悪用するマルウェアが数多く確認されている。
この脆弱性は、ディレクトリトラバーサルの脆弱性になる。ディレクトリトラバーサルとは、通常はアクセスできないディレクトリやファイルにアクセスする脆弱性(攻撃手法)を指す。攻撃者によって細工された圧縮ファイルを展開した場合、任意のフォルダーに悪意のあるファイルが展開されるおそれがある。本トピックではバックドア型マルウェアの事例を紹介する。
・売買される脆弱性情報
ソフトウェアにおける「脆弱性」とは、オペレーティングシステムやプログラムの不具合、設計上のミスなどが原因で発生するセキュリティ上の欠陥を意味する。現在、脆弱性は、多数発見・報告されており、その数は増加傾向にある。
このような状況の中で、発見された脆弱性がサイバー攻撃に悪用される事例も多く確認されており、組織にとって大きな脅威となっている。また、ディープウェブやダークウェブ上では、脆弱性情報や脆弱性を悪用したプログラムなどが商品として取引されており、技術力のないサイバー犯罪者でも比較的簡単に利用することが可能だ。本トピックでは脆弱性を利用したサイバー攻撃の現状と、ディープウェブやダークウェブで売買される脆弱性の事例を紹介する。