デロイト トーマツ グループは、日本企業の「AIガバナンスサーベイ」2019年版を、1月24日に発表した。
2019年版「AIガバナンスサーベイ」は、企業におけるAIの利活用状況やリスク管理・ガバナンス構築の実態調査を目的に、2019年9月18日~11月15日の期間に実施されており、172件の有効回答を得ている。
AIを「利活用している」、または「利活用に向けた取り組みを始めている」という回答は56%で、そのうち本格運用前の技術検証であるPoC(Proof of Concept)を実施している企業は47%だった。また、PoC実施後の本番運用(73%)および目的達成(62%)は、どちらも高い回答割合となっている。一方で、5割がPoCを実施できていないことがわかった。
AIを利活用できていない理由としては、「PoCを企画する人材がいない」(42%)、「活用すべきシーンが思いつかない」(39%)、「AIについて理解していない」(37%)、「予算が確保できない」(29%)と、企画者人材の不足がもっとも大きな原因といえる。
PoCから本番運用に達することができなかった理由については、「システム化や本番運用する体制・人材が準備できない」(51%)、「PoCで目標としていた予測精度が達成できない」(47%)、「ROIが期待していた基準に達しない」(40%)と、運用人材の不足も明らかになっている。
AIに関する投資金額が約5500万円未満、または社内のAI専門家の人数が9名を下回る組織では、目的達成の割合が約3割だが、投資金額が約5500万円以上、または社内のAI専門家の人数が10名以上の組織では、目的達成の割合が5割~6割だった。
AIの利活用が進んだ先に待ちうけている可能性があるAI固有のリスクへの対応状況を尋ねた質問では、すべてのリスク項目において「リスク未認識」という回答は17%を下回り、AIの利活用にあたってAIのリスク識別は行われている傾向であるといえる。
一方で、「リスクがあるAIを未使用である」との回答が多く、該当リスクのAIを活用するケースがない、またはリスクの小さいAIから活用を始めていることから、AIの利用範囲が限定的になっている可能性がうかがえる。とりわけ、AIが偏見を含んだ判断を行ってしまうリスクを含むAIは「利用していない」との回答が多く、採用や人事評価、与信といった領域でのAI利用には慎重になっていることが示された。