アイ・ティ・アール(以下、ITR)は、2021年8月~9月の期間で国内企業を対象に実施した、IT投資動向調査の一部結果を発表した。
本調査では、IT予算の増減傾向や製品・サービスの投資意欲における動向の変化に加え、新型コロナウイルス感染拡大によるIT施策に関する取り組み、そしてニューノーマルに向けた企業の戦略・施策に関して調査・分析したという。また、DXへの取り組み状況および、IT投資や戦略・施策の状況との関係性についても調査を実施したとしている。なお、調査対象は国内企業のIT戦略・IT投資の意思決定に関与する役職者とし、2,973件の有効回答を得たという。
IT予算額は予想値を上回り増額傾向
2021年度のIT予算額は、「増額」とした企業の割合が35%、「減額」した企業は11%という結果になったとしている。
この増減傾向を指数化した「【図1】IT投資インデックス」を見ると、2021年度の実績値は「2.28」となり、2020年度の実績値(1.93)や、前年調査時の2021年度予想値(1.72)を上回っているという。また、2022年度の予想値は「2.17」で、2021年度実績値(2.28)からわずかに下降すると見られている。
DX推進の専任部門を設置する企業が増加
DXを推進するために何らかの組織体を有する企業は、調査開始以降初めて7割を超えたという。これは、「DXを推進する専任部門が設置されている」企業が前年から5ポイント増加して23%となり、2割を超えたことが影響した結果だとしている。ただ、依然として既存部門が掛け持ちで担当している企業(29%)が多数であるという。
また、今回の調査では16のDX関連施策をあげ、それらの進展状況や成果の有無についての回答から「DX実践度スコア」(100点満点)を算出。同スコアとDX専任部門の設置状況の関係を分析している。その結果、DX実践度スコアが高い企業ほどDX専任部門を設置している割合が高く、同スコアが70点を超える企業では、半数以上がDX専任部門を設置しているという特徴が見られたとしている。
「コロナ禍でDXが加速した」と認識している企業ほどIT予算が増額
コロナ禍におけるDXへの取り組みの進展状況を見ると、本調査時(2021年8~9月)までの約1年半のコロナ禍において自社のDXへの取り組みが「加速」したと考えている企業は、全体のほぼ半数を占めたという。一方、「減速」したとする企業は1割未満であったと述べている。
また、取り組みの進展別に2021年度のIT投資インデックス(IT予算の増減傾向)を見ると、DXへの取り組みがより加速したと認識している企業ほど、IT投資インデックスが高い結果が明らかになったという。特に、「大いに加速」とした企業のIT投資インデックスは「6」超と、全体平均の「2.28」を大きく上回ったとしている。また、「大いに加速」と「大いに減速」のIT投資インデックスの差は11ポイント強になったという。
IoTへの投資意欲が増加傾向
企業ITに関わる代表的な製品・サービスの全110項目を選出し、「インフラ/デバイス」「ミドルウェア」「業務系システム」「情報系システム」「セキュリティ」の5分野に整理。2022年度に向けた投資額の増減と、新規導入の可能性を調査したとしている。また、今回の調査ではいくつかの項目を見直し、新たに「衛星コンステレーション」「近距離無線通信」「EDI」「クラウド電話/クラウドPBX(オフィス電話用途)」「CSPM(Cloud Security Posture Management)」「IDaaS(Identity as a Service)」を新たに追加しているという。
また、全項目について導入企業における2022年度の投資額の増減傾向を「投資増減指数」、2022年度において新規で導入する可能性のある企業の割合を「2022年度新規導入可能性」としてそれぞれ算定し、動向を分析。その結果、2022年度新規導入可能性では「電子契約/契約管理」が、投資増減指数では「IoT」が1位になったとしている。なお、前年調査の新規導入可能性で1位であった「5G(パブリック)」は今回2位となったものの依然として高い新規導入可能性が示されたという。一方、前年調査の投資増減指数で1位であった「ビデオ会議/Web会議」は、今回調査では5位に後退したとしている。
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