米国時間9月12日からの3日間、SAS Institute(以下、SAS)はデータサイエンティスト、アプリケーション開発者、プログラマー、エンジニアなどを対象とする「SAS Explore 2023」を開催。同カンファレンスは通算2回目、対面開催は初となる。
AIでビジネスは「データドリブン」から「アウトカムドリブン」へ
初日の基調講演では、ジェネレーティブAI戦略とSAS Viyaに係わる新製品の紹介が行われた。SAS エグゼクティブバイスプレジデント兼最高技術責任者(CTO)のブライアン・ハリス氏が登壇すると、「人間が処理できる量を超えるほど情報過多のビジネス環境下、競合他社よりも迅速かつ良い意思決定を下すにはデータドリブンでは不十分である。組織の生産性を高めるためにもAIの“素早く学習する”力を利用し、『アウトカムドリブン』に変わらなくてはならない」と訴える。
その上で同氏は、SASのジェネレーティブAI戦略を「合成データの生成」「デジタルツイン」「大規模言語モデル(LLM)」という3つの柱で説明。この中でも3つ目のLLMは、ジェネレーティブAIを支える重要な要素である。LLMの長所は何といっても膨大なデータを使い、“会話体験”を提供できることだ。しかしながら、LLMは企業システムのデータに接続するようには設計されていない。また、ジェネレーティブAIのモデルが従来のプレディクティブAIのモデルと統合されていなければ、アウトカムドリブンの意思決定はできないと指摘する。
この問題解決のため、SASは「Azure OpenAI Service」を擁するMicrosoftを戦略的パートナーとして、「ジェネレーティブAI」「プレディクティブAI」の2つが統合された環境開発を進めているという。なお、同環境は2023年第4四半期にプライベートプレビューでの利用開始を予定している。
また、前述したアウトカムドリブンを実現できるよう、データサイエンティストや開発者のニーズを満たす2つの新しい製品「SAS Viya Workbench」「SAS App Factory」を発表した。
「SAS Viya Workbench」
Workbench(作業台)の名前の通り、SAS Viya Workbenchはクラウドネイティブな環境下において、効率的かつセキュアな方法でコードを実行するための新たな開発環境。エンタープライズ向けの「SAS Viya」とは異なり、軽量な点が特長だ。既に多言語対応されており、開発者はPython、R、SASの中から使い慣れた開発言語を選び、高いパフォーマンスが要求される本番環境でも通用するようなAIモデルを迅速に開発できる。
「SAS App Factory」
SAS App Factoryは、AIドリブン(AI駆動型)のアプリケーションを迅速に開発するための開発環境。React、TypeScript、Postgresで構成されるクラウドネイティブなテクノロジースタックのセットアップ、統合までのワークフローを自動化でき、開発者はAIモデルとAIドリブンのアプリケーション開発・運用により集中できるという。
なお、両新製品ともSAS Viyaとは独立した形でSaaSとして提供。一般提供は共に2024年初頭を予定している。
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