2024年10月24日、日本オラクルは「Oracle Cloud Forum」を開催。「オラクルクラウドの進化~多様性と独自性の追求~」と題した基調講演には、ゲストとしてNTTデータと日本マイクロソフトの2社が招かれた。
冒頭、日本オラクル 取締役 執行役 社長 三澤智光氏が登壇すると、OracleとしてFY24は売上高530億ドル、RPO(契約済み将来売り上げ)990億ドルと「このRPOの多くはクラウドからもたらされており、株価を押し上げている要因だ」と説明する。
先行している大手クラウドベンダーと比較したとき、後発のため市場シェアは少ないものの独自進化を遂げているという。たとえば、「OCI Supercluster」では、Frontierスーパーコンピューターの3倍もの性能を発揮できると公表しており、生成AIを提供している多くのベンダーがOCIを採用しているという。Oracleとして生成AIの開発競争に参入するのではなく、そこを下支えする部分でのシェア拡大を進めているとする。
また、「Dedicated Region 25」により、最低3ラックからOCIを提供できるとも強調。加えて、Oracle Alloyの提供によって、パートナー企業によるソブリンクラウドへの参入障壁を下げられたという。
実際にテレコム・イタリアやstc(サウジアラビア)、TEAM IM(ニュージーランド)などの事例が誕生している中、日本においても野村総合研究所(NRI)や富士通に続き、NTTデータも導入するとして、NTTデータ 執行役員 テクノロジーコンサルティング事業本部長 新谷哲也氏に水を向ける。
NTTデータでは、NTT Limitedを傘下に移管することでデータセンター事業のポートフォリオをグローバル事業として統合。その中でソブリンクラウドへの対応も進めているとして、「世界的にソブリンニーズは高まっている。経済安全保障の観点からも特に欧米で対応が加速しており、日本でも『OpenCanvas』というソブリンクラウドのサービスを提供してきた」と話す。同サービスは、金融業界や保険業界、官公庁向けに提供してきたものだ。AI需要の高まりなども受けて、OpenCanvasにOracle Alloyを採用することで市場ニーズの変化に対応していくとする。
「まずは日本市場で確実にリリースしていき、将来的にはグローバルで展開していく。ここに至るまで多くのハードルがあり、ようやくスタート地点に立てた。成功を目指して、Oracleと互いにがんばっていきたい」と新谷氏は述べた。
続いて、日本オラクル 専務執行役員 クラウド事業統括 竹爪慎治氏が登壇すると、分散クラウド、マルチクラウド戦略について説明を行う。
OCIとして分散クラウド戦略を推し進めており、グローバルで165リージョンを展開。「ここ数年で専用クラウド、マルチクラウドに注力してきた」と話す。「Oracle Database @Azure」などが伸長しており、Microsoft AzureとGoogle Cloud、Amazon Web Services(AWS)での対応を進める中、日本ではOracle Database @Azureの東京リージョンが提供されたことに触れると、日本マイクロソフト 業務執行役員 大谷健氏を壇上に招いた。
大谷氏は「生成AIが使われる中で、あらためてデータの重要性が見直されている」として、Oracle Database上にミッションクリティカルな重要データが保管されており、その活用を進めていくことの重要性を述べる。また、東京リージョンで提供がはじまったOracle Database @Azureに言及すると、サービスとしてはMicrosoftが先行して提供できている状況だと強調。マルチゾーンでの提供を実現するために、西日本エリアでのリージョン展開を来春を目指して進めていきたいと明かした。加えて、Microsoft Fabricを通じてOracle GoldenGateとの連携により、Oracle Database上の重要データをシームレスにPower BIなどで利活用できるようにするという。
再び登壇した三澤氏は、「コストを抑えながら、他社がオプションとしているセキュリティ機能を標準提供していく」として、大規模なミッションクリティカルシステムには、「専用クラスタリング」「低遅延」「ステートフル」「高処理性能」といった要件が求められると説明。そこを満たせているハイパースケーラーはなく、ワークロードを稼働させる上では高パフォーマンスのデータベースが必要だとしてOCIの優位性を強調する。さらに「OCI Zero Trust Pack Routing(ZPR)」に目を向けると、セキュリティ責任者が自然言語でルールを記載するとZPRが解釈してくれるため、データセンター全体での自動化を推進できると話す。
また、「Oracle Applications Unlimited」を推進しており、少なくとも2035年まではOracle Premier Supportを提供している点でも、他社と差別化を図っていると三澤氏。大手企業向けにはOracle Applicationsを、中小企業向けにはOracle Netsuiteを提供しており、これらもOCIの上で稼働しているために他社のSaaS ERPとは異なり、DRサイトやインフラ拡張などの非機能要件を無償提供できるとする。「業務アプリケーションの世界は、AIが大きく変えていくことになる」として、既に100以上の生成AI機能を組み込んでおり、各業務に特化した50以上のロール別の専用AIエージェントを設けていると話す。なお、今後追加されるAI機能についても、基本的には標準機能として無償提供していくとする。
「Oracleは10年遅れてIaaS/PaaSに参入したが、それ故に競合他社と異なる進化を遂げている」(三澤氏)
なお、2025年2月13日には、「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」を開催するとのことだ。
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