2025年5月15日、ガートナージャパン(以下、Gartner)は、テクノロジー人材の将来に関する最新の展望を発表した。
ヒューマノイド、汎用人工知能(Artificial General Intelligence:AGI)といったスーパーパワー(想像を絶するテクノロジー)、それらを前提とする新たな産業革命やデジタル戦争などが現実のものとなりつつある一方で、紙、印鑑、手作業などの旧態依然とした仕事のやり方を継続する人や組織はいまだ多く存在する。生産性や効率性の観点からこのような仕事のやり方を見直す動きも進んでいるほか、生成AIからAIエージェント、エージェント型AIやAGIへとテクノロジーが革新する中で、時代遅れとなった業務プロセスを置き換えようとする機運は高まりつつあるという。
実際にコールセンターの一部では、人間のコールセンターからAIコールセンターへの置き換えが進んでいると同社は述べる。米国、ドイツ、中国、韓国などでは自動車業界を中心にヒューマノイドの市場投入も見られるようになってきているとのことだ。一方で、こうした置き換えだけの議論や実践だけでなく、AIと人間の共生を前提とした新たなビジネススタイルを模索する動きも加速。これから人間は、多種多様なマルチエージェントと共生し、ダイナミックな環境で必要なタスクをこなしていくようになるという。
2028年までに、作業者的な仕事をしている人の90%は、業務の廃止に直面することはもとより、AIアシスタントやヒューマノイドに置き換えられ職を失うリスクが高まるとGartnerはみている。一方、同社は2028年までに、日本企業の従業員の70%は企業や組織のためではなく、自分の生き残りのために新たなケイパビリティを獲得するという仮説も立てているとのことだ。
日本の雇用の仕組みについて、昨今の学生は入社3年程度で次の道を考える傾向があるという認識や懸念が強まっている。このような流れは、雇用流動化の拡大につながっており、結果として組織への依存を避けようとする個人が自らのキャリアを守り、また成長させるために、主体的にスキルを含む新しいケイパビリティを身に付けようとする動きが強まっているという。
近年では、資格取得を支援するオンライン講座やAIによる英会話アプリなど、従業員が自費で手軽に学べる機会も増えている。今後、新たなケイパビリティを身に付けて成長し、活躍しようとする人が、より良いキャリアを求めて転職するケースが増え、企業間での人材移動が活発化するとのことだ。結果、高いケイパビリティを持つ人材を巡る争奪戦が激化し、給与や条件面での競争の加速など従来の雇用形態の見直しが進むと同社は述べている。
企業は従業員を大事にし、元気にし、活躍できるような環境を作ることを促進するマインドセットと実践を尊重して、そのための時間を割り当て、投資を行うといった具体的な施策を人材投資戦略の1つの柱とする必要があるという。そのためには、部門長、部課長といったマネジメントが「学習する組織」に向けて施策を業務に取り入れ、今の仕事と時間の使い方を見直すことが重要だとしている。つまり、不要なミーティングやメール、手続き、報告などで削減できるものは徹底的に削減し、余剰を作り新しい学びの時間を確保することが重要。個々人も、このトレンドを自分事として捉え、自ら自身のタレント価値と新たなケイパビリティを獲得するよう、自助努力を行う必要があるとのことだ。
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