ITシステムの内製化とパートナー選択が鍵に
商用からオープンソースへの移行について、少しネガティブな指摘をしてしまった。しかしながら、移行をやめるべきだと言うつもりは毛頭ない。商用製品に比べライセンスコストなどはあきらかに安くなるので、そのメリットを享受することは、情報システム部門にとっては極めて大きなメリットだろう。そこで浮いたコストを、新たな戦略IT投資に回すこともできる。
とはいえ、オープンソースのソフトウェアを選べばコストが下がると同時に、新たなリスクや手間が増えるかもしれないことは十分に理解しなければならない。この時にリスクを少しでも下げることにつながるのが、選ぶソフトウェアの情報がどれだけたくさんあり、それが入手しやすいかだろう。市場で実績が多ければ製品としては枯れていて、バグ情報なども充実し安定した稼働が望める。
さらに、そのオープンソース・ソフトウェアを担ぐSIerなどの存在も重要だ。オープンソースのソフトウェアを選べば、ある程度はITシステムの内製化を覚悟する必要がある。そのために選んだソフトウェアの知識やスキルを持つエンジニアを、社内に確保すべきだろう。
その上で、選ぶオープンソース・ソフトウェアに対し高い技術力のあるパートナー企業を見つけることも大事だ。すべてを自分たちでやろうとすれば、選んだ方法が正しいかどうかを判断するのも自分たちだけになってしまう。適宜外部の目で評価してもらい、適切なアドバイスをもらえる存在を見つけておけば、新たなチャレンジでも安心感は大きい。
選ぶべきパートナーとしては、オープンソースのデータベースを活用するコンサルティングサービスや独自のサポートサービスを提供していたり、企業としても積極的にオープンソースコミュニティに参加していたりするような企業が良いだろう。
さらにその企業が対象のオープンソース・ソフトウェアについて、積極的に情報発信しているかどうかもチェックポイントとなる。オープンソースのソフトウェアのような世界では、情報発信している人や組織に最新情報が集まってくる傾向があるからだ。
そして最後に1つ付け加えたいのは、データベースの移行のきっかけがライセンスコストの削減という少し後ろ向きな理由だったとしても、できれば選ぶソフトウェアを利用したくなる積極的な理由が欲しいところだ。たとえばPostgreSQLなら得意な地理情報システムや全文検索のシステムで活用する、MySQLならばレプリケーションを利用した大規模なスケールアウト構成の実現や、安価に災害対策や高可用性の仕組みを構築するなどなど。せっかく選んだソフトウェアなのだから、安いから仕方がなく使うのではなく特徴や良さを最大限に引き出し大いに活用する。そうすることが、結果的にオープンソースのデータベースを安定し高い信頼性のもとに運用することにつながるだろう。