日本とイギリスで異なるインターネットバンキングの不正利用被害の傾向
銀行が提供するサービスの利用方法は多様化しています。すでに銀行の窓口に行くよりもインターネットバンキングをよく使うという方も多いでしょう。全国銀行協会の調査(参照1)によると、銀行サービスの利用者のうち、1年に1回でもインターネットバンキングを利用する人の割合はおよそ6割に達しています。利便性の向上やサービスの拡充、そしてスマホなどのデバイスの普及とともに今後もインターネットバンキングの利用者は増え続けるでしょう。このように様々な利用チャネルが拡大することは、サービス利用者にとって喜ばしいことである半面、銀行にとっては不正行為の機会も増えてしまうというリスクもあります。
インターネットバンキングにおける不正送金被害について、各銀行がCMで注意喚起を頻繁に行っていたのを記憶しておられる方も多いでしょう。日本では2015年をピークに不正被害額がやや減少しているため、ここ数年はあまり騒がれなくなっているように感じます。しかしあくまでそれは日本国内の話であって、グローバルの視点から見ると状況は異なります。例えばインターネットバンキングの不正被害の発生状況についてイギリスを例に見てみると、日本と比較して不正被害の件数や額が1桁大きいという状況がここ数年続いています(表1)。
期間 | 日本 | イギリス | ||||
被害件数 | 被害額 | 実被害額 | 被害件数 | 被害額 | 実被害額 | |
2017上半期 | 214 | 5億6400万円 | 4億4600万円 | 11,725 | 83億2500万円 | 64億2000万円 |
2016 | 1,291 | 16億8700万円 | 14億6300万円 | 20,088 | 152億7000万円 | 104億4000万円 |
2015 | 1,495 | 30億7300万円 | 26億4600万円 | 19,691 | 200億2500万円 | 119億8500万円 |
2014 | 1,876 | 29億1000万円 | 24億3600万円 | 16,041 | 122億1000万円 | N/A |
2013 | 1,315 | 14億600万円 | 13億3000万円 | 13,799 | 88億2000万円 | N/A |
これまで日本における不正送金の被害額が他国に比べて低かった理由のひとつに、“言語の壁”が挙げられてきましたが、2020年の東京オリンピックに向けてその状況も変わっていくことが予想されるため注意が必要です。海外からの訪日者が簡単に日本の金融サービスを利用できるようにサービス内容の英訳が進み、海外で発行されたカードを簡単に利用できる場所も拡大するでしょう。2016年5月に日本のコンビニATMを通じて国外金融機関から18億円以上が不正に出金される事件が発生したように、日本国内に留まらず複数の国に関連した犯罪への対策も考慮する必要があります。