Oracle OpenWorld 2017で発表されたAutonomous Databaseとはどんなものか?
谷川:谷川です。DB Onlineのチーフキュレーターという立場です。リレーショナルデータベースやNoSQLなどいろんなデータベース、ほかにもビッグデータやAIなどを取材しています。実は2005年までオラクルのマーケティングに在籍していて、Oracle Databaseの7.3から9iくらいまで見てきました。今日は新しいことを聞いていきます。
柴田:日本オラクルの柴田長(つかさ)です。「しばちょう」と呼ばれています。セールスコンサルタントとして案件の技術支援など。いろいろ頑張っています。
谷川:Oracle Databaseで好きな機能はありますか。
柴田:ASM(Oracle Automatic Storage Management:自動ストレージ管理機能)です。
谷川:渋いですね。さて2017年のOracle OpenWorldでは「Autonomous Database」が発表になりました。Oracle Databaseのバージョン番号も「12c」から「18c」へ。大きく変わるように見えます。
柴田:当初は「次は13だろう」と言われていたのに「18c」で驚きました。お客様のビジネス変化のスピードが上がってきたことがあり、Oracle Databaseのリリースサイクルも早めていこうとなりました。これからは1年に1度メジャーバージョンをリリースする予定です。そのため、2019年にリリースされるものは19になる予定です。
谷川:それはびっくり。Oracle Databaseってひとつ古いバージョンにするとか、じっくり使うものなので、そんなに頻繁にバージョンアップされたらついていけなくなるかも。とはいえ、今の時代、古いバージョンをあえて使うメリットはないような。柴田さんから見て特に気になるとか有用な新機能はありますか?
柴田:新しいバージョンの新機能は……もう「すごい」ですよ。Autonomous系の機能拡張がだいぶ盛り込まれています。全く新しい機能ではなく、すでにある機能を拡張したものなので安定しています。
谷川:既存機能の延長線上にあるということは、アップデートしても不具合はあまり出なくて安心かもしれませんね。逆にそんなに目新しくはなくて「期待外れ」という見方もできそう。「Autonomous Database」にはどんな機能があるのでしょうか。
柴田:まずは知っておいてもらいたいのは、Autonomous Databaseを構成する要素は3つあるということです。従来からあるOracle Databaseの最新版で多くの自動化機能が実装された「Oracle Database 18c」、インフラとしての「Oracle Cloud」、ワークロードを自動的に最適化するツール群「Oracle Autonomous Database Cloud tooling」。この3つで完全自動化を実現します。
谷川:インフラとしてOracle Cloudがあるということは、オンプレでOracle Database 18cを使う、だと不完全なのですね。機能で見るとどんなものがありますか。
柴田:例えば12cにあるRAC関連機能で、自動診断レポジトリ(Autonomous Health Framework)があります。Autonomousという名前がついていますが、まだAutonomous Databaseの構想が出る前に開発された機能です。
柴田:Autonomous Databaseでは自動から自律へと進みます。例えば自動セグメント領域管理(Automatic Segment Space Management)も古くからある機能です。これらのデータベース管理者がチューニングや運用保守で使う自動化機能はOracle Databaseが十数年かけて開発し、改善を続けてきた機能です。ただしこれまではデータベース管理者がそれぞれの機能を使うかどうか判断して、実行していました。Autonomous Databaseでは自動化から自律的に動く、つまり勝手にやってくれる。そういうコンセプトです。自動運転なら目的地を設定したら、あとは勝手に運転してくれるようなイメージです。
谷川:自動化のレベルがワンランク上がったと。
Autonomous Databaseにはどんな機能が実装されるのか
柴田:実はExadataも自動化の延長線にあります。ソフトウェアとハードウェアが最適化され、設定済み、チューニング済みでした。Autonomous Databaseを実現するための一歩でした。そして満を持してAutonomous Database。すべては1つの道でつながっています。
谷川:なるほど、Exadataも。
柴田:ハードウェアとソフトウェアが融合することで、実現できた機能もあります。例えばExafusion。InfiniBandを使ったデータベース間通信を最適化したExaData特有の機能です。またはSmart Scan。ストレージにOracle Databaseの一部を入れたかのように、ストレージ側で先にデータを絞り込んでからサーバーに転送するのでSQL処理が高速化します。これはExadataだけではなくAutonomous Databaseのデータウェアハウスサービスでも使われます。
谷川:ExadataのクラウドサービスとAutonomous Databaseのデータウェアハウス版サービスは同じでしょうか。違うものでしょうか。
柴田:別です。ExadataのクラウドサービスはExadataを汎用的に使うためのもので、今後リリースされるAutonomous Databaseのデータウェアハウス版はデータウェアハウス処理に特化したものになります。
谷川:Autonomous Databaseは使えるようになったらどのあたりが楽になりますか?
柴田:大分楽になると思います。ぼくの前職はSIでデータベース管理者でした。大型案件の稼働日にデータベースが落ちまして。心の底からOracle Databaseに詳しくなりたいと思い、オラクルへの入社につながりました。
【参考記事】
しばちょう先生登場!Oracle Databaseのプロになるきっかけとなったトラブルとは?―日本オラクル 柴田 長さん
柴田:Oracle Databaseがどんなに進化しても、技術情報を発信しても、どうしてもトラブルは絶えません。パッチを当ててないために既知の不具合に遭遇したり、推奨される設定ではなかったりという場合もあります。しかしAutonomous Databaseならオラクルがインフラも含めて、最適に動かせる環境を提供できます。当然パッチも当たっています。
谷川:昨年のOracle OpenWorldでラリー・エリソン氏が「Autonomous DatabaseはAWSのRedShiftよりも断然早い」と発言していました。性能を向上させる機能にはどんなものがありますか?
柴田:例えばIn-Memory Columnar Formats in Flash Cacheです。フラッシュにキャッシュする時に列型で持ってくるので性能にはかなり効くと思います。あと性能とは関係ありませんが、他社クラウドにあるデータを移動するマイグレーションツールなども提供すると聞いています。
谷川:Autonomous DatabaseにはOLTPやNoSQLのサービスも発表されました。DWHの後だと聞いていますが。そうしたものにも背後にはExadataが使われるのでしょうか。
柴田:恐らく。そうでないとオラクルでやる意味が……というのは、言い過ぎかな(笑)?
Oracle Database 18cに移行するには?どんな新機能があるか?
谷川:Oracle Database 12cからクラウドを意識しています。18cのクラウド向け改善機能にはどんなものがありますか?
柴田:18cではマルチテナント、インメモリ、シャーディング関係に注力しています。クラウド化が進んだことが背景にあります。クラウドだとデータベースをたくさん作れるようになりますよね。すると「あっちに移したい」などポータビリティが必要になり、複数のデータベースを効率よく管理する機能も必要になります。
谷川:マルチテナントはまだあまりフォーカスされていませんね。12cから熟成されてきたのでしょうか。まだ「マルチテナント使っている」という声はあまり聞いたことがないのですが(笑)。
柴田:出てきていますよ。感触あります。マルチテナントデータベースを使うと、管理作業が共通化できるのでデータベース管理者1人で管理できるデータベースが桁違いに増えます。作業が早く終わり、早く帰れるようになります。
谷川:18cへ移行できるバージョンに制限はありますか。
柴田:11.2以降または12であれば移行できます。スムーズに移行できるようにと考えています。
谷川:先ほどリリースサイクルを上げて年ごとにバージョンアップすると聞きました。開発体制も変わったのでしょうか。
柴田:米国の開発責任者から、日本の要件や課題をしつこく聞かれました。以前よりもお客さまの要望やフィードバックが製品開発に反映されるようになっています。
谷川:より謙虚なオラクルになったのですね。RAC(Oracle Real Application Clusters)はどうですか。
柴田:機能改善がすごいですよ。RACだと興奮して話が長くなってしまうのですが。今後は勉強会やテクノロジーナイトなどで新機能を解説していこうと思います。
谷川:今日はどうもありがとうございました。