ストレージ仮想化は難しいのか?
ストレージ仮想化は、仮想化本来のメリットが理解されるにつれて、インフラ仮想化、ストレージ管理の手法として注目されてきている技術である。しかし、サーバ仮想化と比較すると十分に理解されていない場合も多い。
これは両者の仮想化を比較してみるとわかりやすい。両者の仮想化の本質を考えると、サーバ仮想化が性能の共有であるのに対して、ストレージ仮想化は領域の共有であるという事が言える。この違いが、ストレージ仮想化をわかり難くしているのである。
サーバ仮想化は、ハードウェアの高性能化に伴い発生した性能面の余剰リソースを有効活用するというアプローチで、1つのハードウェアの性能を論理的に分割し共有するというソリューションになる。例えば、5台の物理サーバを1台の仮想サーバで統合する事を考えてみよう。サーバのスペックの違いはあっても、5台が1台に減少する点や、統合した時からCPUの使用率が上がる点など、効果がわかりやすい。
一方、ストレージ仮想化は、大容量化に伴い発生したディスク領域の余剰リソースを有効活用するというアプローチで、分散した複数の領域を集めて論理的に分割し共有するというソリューションになる。例えば、既存の4台のディスクアレイをストレージ仮想化装置で統合する事を考えてみよう。仮想化装置が増え、既存のディスク領域を単に統合しただけでは使用率はあがらないという事になる。ディスク領域そのものも仮想環境にあわせて新規に構成する場合はいいが、既存のディスクアレイを使う場合などは、単純に導入時の効果は見え難くなってしまうのである。
ストレージ仮想化の本当のメリット
実はリソースの有効活用は、ストレージ仮想化のメリットの1つにすぎない。現在のインフラ仮想化のトレンドは、単なるリソースの有効活用といったメリットだけでなく、仮想化する事の柔軟性・自由度からくる運用・管理のメリットが理解されてきた事が大きい。つまり、ストレージ仮想化も、その運用・管理面まで踏み込んで初めて本当の効果が見えてくるのである。
もともとストレージの役割とは、データの保存である。データは、コンピュータが処理を行った結果として常に発生するものなので、データそのものや保存領域を管理する方法は常に意識されてきた。
しかし、ストレージの運用・管理には、データを保存する領域という性質上、なるべくリスクの少ない方法が選択される場合が多かった。更に、近年データの増加や24時間運用など、ストレージ運用要件の多様化や複雑化が進んだ。結果として、リスクを回避しつつ運用効率を上げる事が難しくなり、それらの事がストレージの運用・管理面で大きな無駄や負荷を与えていた。
つまりストレージの運用において、リスクの軽減とストレージ運用の効率化の両立は難しく、結果として使用率の低下や、運用・管理コストや負荷の増大を招いているのである。
本来、インフラとしてのストレージの要件は、
「データが安全に保存でき、必要なときに最適なパフォーマンスで取り出せる」
という事だろう。この要件は、仮想化によってハードウェアを切り離す事で、リスクを軽減しながら、より柔軟に対応することが可能になる。いくつか運用上のリスクと仮想化によるストレージ管理のメリットを例にあげてみよう。