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オフショア開発の今

オフショア開発で頻発するコミュニケーションや品質管理課題、回避する方法とは

 過去3回でオフショア開発を導入する理由や導入後の実際の体制等について話してきた。第4回では、実際のグローバル開発現場の失敗から課題解決への取り組み、過去の成功事例なども踏まえながら求められるグローバル開発の在り方について触れていきたい。今回は実際の事例をもとに、オフショア開発のデメリットについて、現状と解決への取り組みを当社の具体例とともにお伝えしたい。

オフショア開発で予測される課題

コミュニケーションにおける課題

 オフショアで開発を行う際、コミュニケーションが原因でトラブルに発展することは少なくない。実際に当社でも以下のような課題が初期段階で浮き彫りとなった。 「要件を説明してもBSE(日本語が堪能なブリッジSE)が理解できない」「理解できたとしても会議時間は日本人と行うのに比べて約1.5倍かかる」など、言語が障壁となる課題はどこのオフショア開発企業でも発生するだろう。また、契約後はリモートでのビデオ会議が多く、ネット環境にも左右され、日本語の発音が悪く聞き取りにくく、時間が経っても日本語能力が向上しないといった問題も散見される。

 このような課題を回避するため、オフショア企業を選定する際、担当となるBSE候補の個人の能力を直接会ってチェックすることを推奨する。もちろん国内所在の日本企業で長期勤務した経験があり、日本語でのコミュニケーションに支障のないエンジニアも多く存在するが、ベトナムなどのオフショア市場の拡大に伴い、現状の人材不足感は否めない。そこで、オフショア開発企業で、どの程度の日本語教育を行っているかが重要になる。各社強化ポイント、取り組む姿勢や、工夫している点は異なる。

 例えば当社では、8年前のオフショア開発事業スタート直後から日本語教育を開始。今では専門の日本語教師を雇用し、受講者のレベルでクラス分け、初心者クラスはベトナム人講師によるグループレッスンが、上級クラスは日本人講師がマンツーマンで担当している。また、IT日本語の講座や、顧客との会議(日本語)に日本語教師が参加し会議後に会話上の課題をフィードバックするなど、より実践的な取り組みを行っている。

 さらに、プロジェクトのスタート時に、ベトナム勤務のBSEを日本に呼び寄せ、顧客の日本オフィスで2~4週間ほど業務を経験させるプロジェクトも。顧客の業務や企業文化、仕事の進め方などを肌感覚で理解でき、日本語の能力向上も期待できるだろう。

 他方、特定の業務において英語を利用したコミュニケーションを取り入れ兼用する企業もある。ある顧客でAWSの構築・運用を行っていた事例では、当時AWSのエンジニアも少なく、特に開発エンジニアやBSEに今ほどAWSの理解・浸透が進んでいない時期だった。その際、顧客が英語でのコミュニケーションが可能だったため、AWS関連業務に限っては英語ですべてのコミュニケ-ションを行うことで、結果として業務効率と正確性が向上した。

スキル、品質の低下

 ベトナムのITエンジニアの平均年齢は30才前後。日本のエンジニアに比べ、若く、高学歴の人材が多い。一方で、経験不足や国民気質などに起因する低スキル、低品質などの課題もある。ストレートな表現も一部含まれるが具体的には以下のような課題であり、開発のオーバーヘッドとなる。

 
失敗が想定される項目 想定される課題
納期・工程関連
  • 実際の開発工数が日本で行うよりも結果として多くなる(約1.2-1.5倍程度)。
  • 開発スケジュールを守らない。
  • 納期直前で間に合わないと報告(言い訳)してくる。
機能要件
  • 事前相談なく、指示していない機能を追加する。
  • 要件通り(指示通り)に実装されない場合がある。
品質
  • 納品物が正常に動かない。単体レベルの不具合が多い。
  • 使う側(ユーザー)視点でのテストが出来ない。
その他
  • 指示された作業以外やらない。提案はしてこない。

次のページ
オフショア開発で頻発する品質低下を回避する方法とは

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この記事の著者

今井 徹(イマイ トオル)

株式会社コウェル 経営戦略室 室長。20代で株式会社アライドテレシスにてLAN/WAN製品の営業、マーケティングに従事。その後、複数社の国内ステルスモードのスタートアップベンチャーでマーケティングを担当。 その後ビットアイル(現エクイニクス・ジャパン)のグループ企業で、マーケティング、BO部門、ビッ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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