もう一度見直すRPA~成功のポイントから将来予測まで
近年、銀行や保険など金融業界を皮切りに、小売業や製造業などにもRPAが広がりつつある。EY APAC Financial Services Digital Operations Leaderを務めるアンディ・ギラード氏は「EYにおけるRPAビジネスはここ2年で3倍に伸びています」と話す。EY全体では、1000ほどのロボットが毎日24時間稼働しているという。ギラード氏は同社の優位性について「大規模な自動化プロセスを持ち、経験豊富な人材もいて、ビジネスプロセスにエンジニアリングを的確にあてはめることで成果を出せています」と説明する。
日本における事情について、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングの高見陽一郎氏は「昨年まではスモールスタートが多かったですが、2018年になると最初から海外展開を見すえた相談が増えています。すでに導入した企業では次のステップに進んでいます」と話す。様子見な導入から本格的な導入へと移ってきている。
ギラード氏によると、RPA導入の主目的は大きく分けて3つに分かれるという。1つ目はカスタマーサービスの質を向上させること、2つ目は組織内の生産性を上げること、3つ目は企業のガバナンスを向上させリスクを削減させること。
「RPAは短期間で顕著な効果を出せます。しかし、企業ITをよりインテリジェントにするために、どのようにRPAを使えば効果的か。機械学習やチャットボットなどの他の技術も組み合わせたほうがいい場合もあります。それぞれのビジネス要件に合わせて考えていく必要があります」(ギラード氏)
海外のRPA成功例として、ギラード氏はグローバル企業の人事部門でのRPA導入を挙げた。世界で26万人ほどの従業員がいる企業の人事部では、これまで世界中の従業員から毎日のように同じような問い合わせに繰り返し対応していた。そこにRPAとチャットボットを組み合わせることで、単純な質問への対応を無人化できた。その結果、導入からわずか数ヶ月で担当者の問い合わせ対応時間を200万時間も削減できたという。人間はより複雑な質問に集中できるようになり、「企業にポジティブな効果をもたらします」(ギラード氏)
「日本でもいろんな変革が起きているのを肌で感じます。従業員の生産性が向上することでワークスタイルにも変化が起きています。RPA自体は自動化のための技術ですが、変化の中心に人がいます」。高見氏も人間の変化に着目し、「RPAではテクノロジーと人間が共存していこうとする動きが見られます」と言う。
短期的に見るだけでも、RPAは生産性向上や労働時間削減といった形で成果が目に見えやすい。単純作業を自動化することで人間が早く帰宅できれば、残業時間を減らせるだけではなく、大雪や台風などの日に早く帰宅することも可能になる。子どもを迎えにいかなくてはならない従業員にとってもメリットがある。