
「AIブーム」とも言われ、急速にAIの導入機運が高まる中で、「プロジェクトが上手く進まない」「PoC以降のロードマップが描けない」といった悩み事もまた具体的になってきているという。実際どのようなことが課題となるのか、またそれを回避するにはどうしたらいいのか。編集部主催のdata tech 2018に登壇した株式会社Laboro.AI代表取締役 CEO 椎橋徹夫氏が、AI/機械学習の導入に不可欠なソリューションデザインとおさえておくべき考え方について解説した。
AI導入のソリューションデザインとおさえておくべき4つのポイント
「AIを導入することで大きなビジネス価値を得られるのは、バックオフィスよりむしろ各企業のコアなビジネスプロセスだ」

株式会社Laboro.AI代表取締役 CEO 椎橋徹夫氏
そう語るのは株式会社Laboro.AI代表取締役 CEO 椎橋徹夫氏だ。同社は機械学習やディープラーニングなど、研究の世界で生み出される新たな知見を産業界に応用し、イノベーションや技術革新を起こすべく取り組んできた。300社以上のAI導入の相談にのってきた経験から、成功させるための「ソリューションデザイン」の重要性を実感し、4つのポイントについて考える必要があることに気づいたという。
その1つ目が「AI技術の本質」だ。AIという言葉自体がバズワード的に普及した結果、これまでの技術と何が違うのか、何を実現してくれるのか、本質を捉えきれなくてきている。そこを捉え直すことが重要だという。そして2つ目が「産業インパクト」。自身のビジネスや産業について、AI技術がもたらす変化を前提とすると何がどのように変わり、その中でどうすれば価値を最大化できるのかをしっかりと見定めることだ。
3つめは「プロジェクトビジョン」。AI導入のプロジェクトというと短期的な成果を求めがちだが、中長期的に何をどうしていきたいのか、ビジョンを持つことが重要だという。そして、4つめに「ソリューションの開発」として、これまでのITソリューションの開発と異なる部分が多いことをあげた。

出所:株式会社Laboro.AI[画像クリックで拡大表示]
人の活動の9割を占める直感や潜在意識を置き換える
そもそもAIとは、全く新しい種類のソフトウェアといえる。ソフトウェアは入力データに処理が行われてアウトプットされるという仕組みであり、従来のソフトウェアは処理プログラムは人の手で作成されてきた。しかし、AIの場合、処理プログラムの一部または全体を人の手ではなく機械自ら作成する。つまり、従来のソフトウェアが置き換えてきた対象は、ルール化ができる「ロジカルで意識的」な部分。そして、AIによって置き換えられるのは、人が「直感的、無意識に」行なっている部分というわけだ。
直感的・無意識の部分を置き換えるということは、一体どのくらいのインパクトを持つのか。人間の活動を氷山で考えれば、これまでIT化が実現した領域は、表層に出ているわずか5〜10%程度、自覚的な顕在意識の部分だ。一方、今後AI/機械学習が置き換えるのは、自覚のない直感や無意識で行なわれている部分。9割以上も残された部分だ。椎橋氏は「これまでIT化されてきた10倍以上の部分にAIが使われ、世界が大きく変わる可能性がある」とインパクトの大きさについて強調した。

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それでは、「直感的で無意識の部分」の機械化によって、産業的にはどのような変化や可能性があるのだろうか。椎橋氏はまず、大きく2つ、「認識」と「予測」において置き換えが起きると予測する。
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伊藤真美(イトウ マミ)
フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。
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