
2018年、パナソニックは創業100周年を迎えた。社長 津賀一宏氏は「人の幸福から離れて生き残る会社はない」と人の幸福に着目し、「くらしアップデート」を掲げている。具体的には「くらしの統合プラットフォーム HomeX」として、イノベーションの基盤が本格始動している。新しい取り組みではどのようにデータを活用しているのか、詳細を同社 島田伊三男氏が解説した。
AIにデザインシンキング。提案はタイミングと共感が大事
データ活用に限らず、顧客に価値ある提案をするには顧客が気づいていない要望を発掘することが重要だ。顧客に「何か困っていませんか?」と漠然と質問しても「特にない。それより安くして」と言われてしまうのがオチだ。しかし顧客に本当に役立つ情報に狙いを定めて収集し、顧客の立場を共感した上で新しい製品やサービスを提案すれば「こんなん待っとったんや」と歓迎してもらえる。データ分析でも同じことがいえる。

例えば洗濯で「どろんこ汚れが落ちない」と悩みを抱えている生活者がいたとする。洗濯していない時に洗剤の広告を見ても、洗剤の購入にはあまりつながらない。しかし洗濯後「どろんこ汚れが落ちない」と困っている瞬間に「こんな泥汚れならこの洗剤が効果的です」と提案すれば、購入の強い後押しになりうる。洗濯機に搭載した何らかのセンサーから廃液や洗濯物を分析できれば、そうした提案が実現できるかもしれない。島田氏は「困っているモーメントをとらえること。データ活用はタイミングも大切」と強調する。
デザインシンキングの手法を採り入れつつも、日本的な文化に根ざした製品開発をしているのがパナソニックらしいところ。島田氏は「日本人は昔から近所のくらしのアップデートを(電気屋や酒屋などの)ヒトが実現してきました。これからは機械(AIやIoT)が人間のように共感しはじめます。私たちは日本的な人のつながりのような、人を活かすAIやIoTを産み出します」と説明する。
出所:出所:パナソニック株式会社 datatech2018 講演資料より[画像クリックで拡大表示]
特徴はデータの収集方法だ。一般的なビッグデータ活用ではデータは「とにかく集める」のが主流で、不要なものから宝物となる希少なデータを発掘するような感覚だ。しかし、それでは非効率であり、データ保管にコストもかかってしまう。しかしパナソニックでは必要なデータに狙いを定めて取得しようとしている。
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加山 恵美(カヤマ エミ)
EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net
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