パブリッククラウドの普及とともに成長したDatadog
Datadogはクラウドを中心としたモダンな環境における運用監視をSaaSで提供している。大きな柱となるのが、メトリクス、トレース、ログ、Synthetics(外形監視)の4つ。CTOを務めるアレクシス・ルクオック氏は常に動向を見すえながら「次のプロダクトはどうあるべきか」と考えてきたという。現在に至るまでのクラウド動向とプロダクトを振り返る。
Datadogの共同創業者となるCEOのオリヴィエ・ポメル氏とCTOのアレクシス・ルクオック氏が最初に出会ったのは1996年。まだ2人はともに学生だった。ルクオック氏が学内のネットワークをLinuxで散策していたところ、ネットワーク管理をしていたポメル氏からハッキングをしていると疑われ、ルクオック氏は数日間ネットワークにアクセス禁止とされたことがあったそうだ。
後に2人はIBM Researchで再会。ここからいくつかの企業でともに働くことを経て、2010年にDatadogを共同創業した。どちらかというとポメル氏は開発側、ルクオック氏は運用側で経験を積んできた。開発と運用の間には溝があるという課題を2人は共有し、「開発と運用を一緒にする」、つまりDevOpsの実現を創業当時から大きなミッションとして掲げている。
脱線となるが、「Datadog」という社名について。創業前のある職場ではオンプレミスで運用しているサーバーそれぞれに名前を付けており、Oracle Databaseを稼働させているサーバーは「Datadog」と呼ばれていた。重要なシステムが稼働していたため、入念に監視していたそうだ。深い意味はないが、ここでの愛称「Datadog」が気に入っていたため会社名にしたという。
2010年にニューヨークでDatadogを起業した。初期のプロダクトで監視できたのはメトリクスのみ。当時からDatadogの特徴となるタグは導入されていた。
Datadogの成長が加速し始めたのは2014年から。クラウドを利用する企業が増えてきたころでもあり、同社がAWS(Amazon Web Services)のre:Inventで初めてブースを出した年でもあった。技術的にはDocker 1.0が注目されていて、DatadogがDockerコンテナにおける監視でセッションを持ったところ、すぐに満席になるという人気ぶりだった。ルクオック氏もあらためてDockerの重要性を認識したという。
2015年にはre:Inventで大手金融機関CapitalOneが登壇し、重要なシステムでパブリッククラウドが使われることを知らしめる兆候となった。この年はKubernetes 1.0が登場し、AWSはLambdaを発表したが、どちらもまだどう成長するかは不透明だった。Datadogではプロダクトにトレースを採り入れ、APM(アプリケーション性能管理)のプロトタイプに着手し、異常検知にAI活用を始めた。
2016年になると、より多くのクラウドやコンテナが使われるようになり、パブリッククラウドの利用規模が拡大してきた。また、それまでDockerのオーケストレーションツールがいくつか競合していたが、Kubernetesの勝利が見えたころでもあった。サーバーレスという概念がメインストリームとなり、Datadogはじめ多くがKubernetesやサーバーレスに投資するようになったころでもある。Datadogでは大きな柱としてログを準備し始めた。
2017年はグローバル企業でクラウドを統合的に利用する動きが本格化し、ますますクラウドの市場が拡大してきた。当時マネージドコンテナのオーケストレーション(ECSやFargete)はまだプロプライエタリ(独自)であり、ルクオック氏は「この分野でもKubernetesは勝てるだろうか?」と注視していたという。Datadogでは監視の大きな柱にログを追加した。
そして2018年、デジタルトランスフォーメーションのキーコンポーネンツはクラウド、コンテナ、サーバーレスが定番となり、多くの企業がIT企業を目指してパブリッククラウドへと向かった。マネージドオーケストレーションの分野ではKubernetesがデファクトの地位を獲得した。ルクオック氏は「サーバーレスのトレンドはまだ続くだろうが、まだ制限が残る。もう1~2世代ほど推移を見ないと」と話す。
Datadogでは4つめの大きな柱となるSynthetis(外形監視)を2018年11月に発表し、2019年3月には晴れてGAとなった。 講演の締めくくりとしてルクオック氏は「これからもパラダイムに合わせ、エンドツーエンドの可視化を進め、プロダクトを拡充していきます。進化を止めることはないので、どうぞ期待してください」と日本のユーザーに向けてメッセージを送った。