Appier(エイピア、共同創業者/CEO:チハン・ユー、以下Appier)は台湾で起業し、東京に本社を置くAIテクノロジー企業。以下は2020年3月31日、同社がオンラインでおこなったプレス発表の内容となる。
Appierは2月にリー・ファン・チェン博士(Lee Feng Chien)が取締役会メンバーとして参画。チェン博士は情報検索およびAIシステムの専門家、アジア地域で最初のGoogleのメンバーだった人物。続いて、3月にはチーフマシンラーニング・サイエンティストとして、ソウドウ・リン博士(Shou De Lin)が就任。リン博士は国立台湾大学教授で、データマイニングおよび機械学習の専門家、世界最高峰のデータ分析競技会といわれるKDD CUPで6回の入賞経験を持つ。
今回の発表をおこなった、同社のチーフAIサイエンティスト、ミン・スン氏はコンピュータビジョン、自然言語処理、ディープラーニング、強化学習の専門家で台湾国立清華大学准教授。同氏は機械学習、ディープラーニングの発展に大きく寄与したことで知られる大規模画像データベース「ImageNet」のプロジェクトを、元Googleの著名AI研究者フェイ・フェイ・リー(Fei-Fei Li)教授とともに推し進めてきた。以下は、ミン・スン氏が発表した内容となる。編者が発表での氏の発言を聞き取り、発表資料に基づき書き起こしたものであることを付記しておく。
現代医療とヘルスケアを革新するのはデータと意思決定
新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)への対策について、AIがどのような役割を果たせるかについてお話しします。まず始めに医療・ヘルスケア分野でのAIの価値についてです。
現代医療においては、データを使った意思決定が重要となります。患者に関するデータには、EHR(Electronic Health Record)といわれる電子医療記録と、画像情報があります。EHRは患者がこれまでどのような診断を受け、治療が行われてきたかの医療履歴診断結果です。画像情報にはレントゲン、CT、MRIなどがあります。医師はこうしたデータから治療のための意思決定を行うのです。
まずはじめに電子医療記録へのAI活用の事例です。EHRにAIを活用することで、患者の再入院を低減することができます。ここでのゴールは、患者をランク付けし、再入院をするようなハイリスクの患者を同定することです。それがなぜ分かるかと言うと、その患者の入院期間、入院の時の緊急度、併存する疾患には何があったのか、緊急外来に何回ぐらい来たのかといった情報から、患者の緊急性を導き出せるからです。この結果から、その患者にどのぐらいの治療のためのリソースを配分するかを計画します。アラバマの最大手の病院では、この方法で1300万ドルを節約することができました。
次に疾病についてです。疾病の原因が、バクテリア、ウイルス、遺伝的なものなのかを探ります。原因がわかれば医薬品の開発やワクチンなどの、治療法を導くことができます。ここでもAIを使うことによって、創薬のデザインの段階を短くすることができます。たとえば、強迫性障害の用薬品の完成を目的に、AIが350種類の化合物のテストから結果を予測し、従来は4、5年かかっていた創薬の期間を12か月に短縮できた例もあります。
AIをCOVID-19の対応に活用するには
次に医療・ヘルスケア分野で成果をあげてきたAIが、COVID-19対策にどう適用できるかを考えていきます。
COVID-19対策としては、以下の図のように、患者数の増大の曲線を平らにすることが目標となります。拡大予防のための正確に診断すること、しかもそれを短い時間で行うことが鍵になります。それによって、オーバーシュートのシナリオを回避することができるからです。
では、AIを使ってどのようにこのCOVID-19の治療法を見つけるのか。どのように回復させ、次の災いを防ぐことができるのでしょうか。