ニューノーマル時代の企業を短期、中期、長期の3段階でサポート
オープニング基調講演に登場した平手氏は、新型コロナウイルスの影響で企業の今後の対応が短期、中期、長期という3段階に分かれると言う。短期的な対応は、テレワークを安全、安心して実現できるようにすること。リモート環境での新たなコミュニケーション手段を整備し、社内システムにも安全にアクセスする手段を準備してきた。
次の中期的な対応に企業は今まさに取り組んでおり、これはリカバリーのフェイズだ。新しい働き方が始まり、社会的にも新しい生活様式へと変化している。これらに対応しながら、企業はビジネスを継続させなければならない。これを、ITを含めなるべくコストをかけずに対応する必要がある。
今後の長期的な対応では働き方改革、新しい生活様式でも企業は新しいビジネスを見出し、成長を目指すことになる。新たな価値を得るために、既存ビジネスとシームレスに連携したものを迅速に開発したくなる。これには、迅速に開発が行えるITアーキテクチャに変える必要がある。「企業では既にニューノーマルを見据えた取り組みを始めており、それはITをフルに活用するものです」と平手氏。Google Cloudはこの3つの段階のいずれにも対応し、顧客に寄り添った支援をすると言う。
Google Cloudが短期的な対応で安全なアクセスを実現するために提供するのが、「BeyondCorp」だ。テレワークでは、多くの企業が社内システムにアクセスする際にVPNを利用している。今回急遽テレワーク環境に移行したことで、VPN回線やVPNゲートウェイの容量が足りずアクセスが遅延する課題が発生している。これに対しBeyondCorpは、VPNなしで安全にアクセスするための「ゼロトラストネットワーク」を実現するものだ。Googleでは既に8年に亘り、ゼロトラストネットワークで安全にアクセスするための環境を整えてきた。そのノウハウを基に、この4月に「BeyondCorpリモートアクセス」を発表している。
BeyondCorpリモートアクセスは、VPNのない信頼できないネットワークでも安心してシステムにアクセスして利用できるようにする。これは、Googleのコアインフラストラクチャにユーザーベースまたはデバイスベースの認証や承認を提供するサービスで、ほとんどのGoogle社員が日常的に使用しており、「Cloud Identity」、「Cloud Identity-Aware Proxy」、「Cloud IAM」、「VPC Service Controls」を利用した機能となる。
もう1つ中長期的な対応としては、アプリケーションの運用コストを最適化し、迅速な開発の実現することがある。そのために活用すべき方法として紹介されたのがサーバーレスコンピューティングだ。これを活用することで「インフラを気にせずに開発、運用を迅速に実現できます」と平手氏。サーバーレスを活用すれば、アプリケーションのバックアップや可用性の確保などの非機能要件を、ユーザーが手間をかけることなく管理できる。これを可能にするのが昨年提供を開始した「Anthos」だ。
「インフラをGoogle Cloudに任せることで、すぐにアプリケーションを展開できます。その上でGoogle Cloudのサーバーレスは、現状を維持したままクラウドの特長を生かせる設計になっています」と言うのは、Google Cloud カスタマー エンジニア 技術部長の佐藤聖規氏だ。Anthosのプラットフォームは、昨年「Anthos GKE On-Prem」を発表し、さらに「Anthos GKE on AWS」の提供も開始している。
これでAWSの上でもAnthosの利用が可能になり、Google Cloud、オンプレミス、AWSを統合化したマルチクラウドで利用できる。Anthosに容易に移行するための「Migrate for Anthos」もあり、これを使うことでコンテナイメージの移行も可能だ。また既存のワークロードをGoogle Cloudに移行するために、「VMware Engine」も用意している。これを使えば既存のVMware環境を「最小限の変更でGoogle Cloudに移行できます。これはGoogle Cloudが運用するマネージドサービスとして提供します」と佐藤氏は言う。