リモートワークで分散する端末からのログ収集が困難に
最後に加山氏は、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが増えるなど多くの変化が起こっている状況下で、SOCに影響はあるのか。そして、ログ分析にはどのような有用性が期待されるのかを訊いた。
まず、SOCのオペレーションについては、AWSやGCPなどのクラウドプラットフォーム上にシステムがあることや、オンプレミスでもVPNを通じてリモートメンテナンスができるため、リモートワークでもさほど影響を受けていないと茂岩氏は述べた。
一方で、ログを取得する環境は大きく変わってしまったという。従来は、社員がオフィスの中で勤務していればプロキシなど会社のネットワークゲートウェイがあるため、ログを監視していれば社内の端末による外部へのアクセス状況を把握することができた。ところが、リモートワークの場合、プロキシを通らない環境もある。
「あらかじめEDRや資産管理ソフトが入っている場合は良いが、そうでないのなら、ログを収集・管理する仕組みを検討した方がよい」と茂岩氏はアドバイスをおくる。例えば、オープンソースの「osquery」のようなシステムモニタリングツールを導入するなどの仕組みが必要となるという。
また、「デジタル・フォレンジック」と呼ばれる、不正行為や情報漏えいといった問題が発生した場合の調査においても、大きな影響を受けているという。実際に問題が発生した場合でも、リモート環境から回収できないログがあることもあり、それらをどう回収していくかが課題となっていると茂岩氏は警鐘を鳴らした。
講演の最後に茂岩氏は「セキュリティ分野におけるログ分析はまだ確立されておらず、市民権を得られていないと感じています。皆さん、スモールスタートでもいいのでログ分析を始めてください。機会があれば、日本シーサート協議会のワーキンググループなどで情報交換させてください」とメッセージを送った。