バックアップ戦略によるランサムウェア対策連載、今回は日本中を恐怖に陥れたカプコンのランサムウェア攻撃を理解するためにも、ビジネスが置かれた現状を踏まえましょう。
コロナで攻撃増、迫りくる被害の実情
COVID-19につけこむランサムウェア被害として6月、ホンダの国内外におけるシステム停止は大きく報道されました。EKANS/SNAKEランサムウェアを突き止める原因究明は、マルウェア検知サービスVirustotalを使ったMilkream、Vitali KremezなどのTwitter投稿がきっかけでした。セキュリティ会社Malwarebytes LABSがさらに詳細な分析を公開。後述するリモートデスクトッププロトコル(RDP)の危険性を報告しています。
7月から8月にかけては、キヤノンのグローバルなimage.canon画像サイトも一時停止に追い込まれました。その原因はMazeだったとセキュリティニュースサイトBleepingComputerが公開。こちらも国内外で報道が拡散されました。
このMazeは6月に米アリゾナのトヨタ系列、Caldwell Toyotaにも進入したとTwitterのRansom Leaksが写真付きで投稿。セキュリティ会社Cywareが取り上げましたが、それ以降の報道は確認されません。
その一方、日本では7月、トヨタ自動車と取引がある、部品金型の設計製造業TMW(愛知県稲沢市)がMazeと見られるランサムウェア感染の可能性を報じられています。
このように、ブランドと膨大なデータを持つ大手メーカーだけでなくその取引先までもが、常にランサムウェア攻撃とそれによる評判失墜、ITリスクならびに広報リスクにさらされています。
もちろん、伝統的な企業だけではありません。フィットネスGPSデバイスで知られるガーミンも、7月からグローバルなシステム障害にあいました。BleepingComputerがWastedLockerランサムウェア攻撃と特定、身代金の支払いまで公表されました。
そして11月16日は、カプコンが11月2日より受けていた第三者からの不正システムアクセス(11月4日に発表済み)によって、個人情報9件が流出済み、さらにはユーザーや取引先 最大35万件の個人情報流出の可能性を発表。老舗ゲームブランドへの大規模攻撃に、世は騒然としました。この標的型ランサムウェアは「Ragnar Locker」(ラグナロッカー)によるもので、FBIもすぐさま11月19日に警告を発動しています。

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古舘 正清(ヴィーム・ソフトウェア株式会社 執行役員社長兼バイスプレジデント)(フルダテ マサキヨ)
ヴィーム・ソフトウェア株式会社 執行役員社長兼バイスプレジデント
日本アイ・ビー・エム、日本マイクロソフト、レッドハット、F5ネットワークスジャパンを経て’ヴィーム・ソフトウェアの日本法人の執行役員社長に就任。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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