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アナリティクスはVUCAの時代の「経営の運転支援システム」

edited by DB Online   2021/07/05 11:00

アナリティクスは「動詞」で表現できる

 SAS Instituteに務めていたときには、このBIとアナリティクスの違いを、よく自動車の運転に例えていました。BIは過去のデータの集計ですから自動車運転ではバックミラーやサイドミラーで、先を予測するアナリティクスは安全に運転するための運転支援システムと。どちらも自動車を運転する上では重要ですが、これからはより運転支援システムが大事になります。VUCAという濃霧の世界を運転しますからね。アナリティクスは、カメラやレーダーによって前方の情報を収集し、それを分析して、意思決定を支援する、経営の運転支援システムなのです。

 以前、ある大手の会社での話を私は感銘を受けました。アナリストが出したデータをベースにした意思決定の提案を、データに懐疑的な役員が疑問を呈したところ、当時のCEOが、これは会社のBest Guess(最高の想定)だからそれの提案をベースに考えろと言ったという話を聞いたことがあります。そのCEOは残念ながら国外に逃亡されましたが、その考え方は素晴らしいです(笑)。

 アナリティクスは、統計、データマイニング、機械学習などのサイエンスのテクニックを使うので、どうしてもとっつきにくい印象があります。ただ、詳細はアナリストやデータサイエンティストに任せるにして、基本を押さえておけば大丈夫です。その基本は、アナリティクスで何ができるかの動詞です。新井紀子さん(国立情報学研究所 社会共有知研究センター センター長・教授)の最近の講演で、「AIは関数」だとお話しされていました。機械が勝手にすべての答え導きだすのではなく、ある入力に対して、期待する出力がある関数ということです。アナリティクスも同じで、“関数で何を出力するのか”なので、動詞で表現できるのです。

 アナリティクスでできるのは、“分類する”、“予測する”、“組み合わせる”、“集計する”です。この動詞をビジネスのコンテキストで考えればよいのです。例えば、“在庫や売上を予想する”、“道を組み合わせて最適なルールを導きだす”、“ターゲット企業を分類する”、“人の離反を予測する”などです。ほら、簡単に思えてきましたよね。

 私が最初に本格的なアナリティスクスを使ったのは、シスコシステムズでのキャンペーンのターゲット決めです。ある製品のキャンペーンを実施するときに、その製品を以前購入したユーザーの属性から、似た属性をもつターゲットをデータマイニングでリストアップしたのです。これをやると、キャンペーンの反応率が明らかに上がっていました。データマイニングすげーと思います。ここでは、お分かりのように、ここでは、キャンペーンのターゲットを“分類する”を使っています。

 アナリティクスには、予測型と、次のアクションを明示する処方箋型のものがあります。ここでは、予測するアナリティクスについて、更にみていきたいです。売上予測、在庫予測、マネーロンダリングの不正検知、ホテルの客室稼働率の予測、犯罪場所の予測など、様々な予測分野があります。過去のデータから未来を予測するのです。実は、予測分析の歴史は古く、現在の機械学習ブーム以前から利用されていました。コンピューティングパワーが増し、ビッグデータが扱えるようになり、機械学習が発達して、かつ使いやすいツールが揃ってきた現在、ビジネス現場での予測分析の利用がより進んできています。

 予測分析の中でも、時系列分析、Forecastについて、掘り下げます。Microsoft社のExcelにも、FORECAST関数がありますね。時系列分析とは、時間の経過に伴い変化するデータを分析することで、この時の経過とともに観察されたデータのことを時系列データと呼びます。時系列データは、例えば、コンビニの毎日の売上、製品の需要、在庫量などで、時間と共に変化していきます。この時系列データの未来を計算するのです。あー、大学の線形代数学の講義を思い出し、じんましんが出そうです。

 時系列分析は、欧米では比較的よく使われてきているテクニックですが、日本では中々根付きませんでした。それは予測の仕方が違うのが1つの原因です。日本では現場力が高く、人がデータを見ながら予測を当てに行きます。かなりの精度で予測しますので、時系列分析を入れた後どれだけ精度が上がるのかという話になります。絞った雑巾からさらに水を絞り出すようなものです。結局、ROIが見えないという話になります。一方で欧米では現場力だけに頼るのではなく、時系列分析の結果を基準に人間が上下を判断する方法を取るのです。職場での人の流動性が高いというのも理由だと思います。

 機械学習+人の判断で、在庫、売上などの時系列データの予測精度を上げることは有効だと思います。そのためにどのように戦略的に時系列データを取得するかは重要なことで、やはりデータ管理が鍵を握りそうです。



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著者プロフィール

  • 北川裕康(キタガワヒロヤス)

    クラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長。33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workdayなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションを担当。その以前は富士通とDECでソフトウェア技術者。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、日々格闘中。

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