前回(ANA野村氏に聞く:ビジネス変革を支えるアーキテクチャー)では、ANA野村さんたちがデジタル変革を進める上でのアーキテクチャーについて紹介しました。 連載の最終回である4回目は、デジタル変革を牽引するIT人材の育て方について紹介します。
IT組織の変遷と進化
野村さんは、2016年にPeachからANAのデジタル・デザイン・ラボに戻ったことは、初回の連載(ANA野村氏に聞く:現場から感謝される情報システム部門へ)でお話ししました。デジタル・デザイン・ラボでイノベーションを起こすべく、準備をすすめていましたが、その一年後の2017年にANA本体の情報システム部門として2012年にIT推進室から改称した業務プロセス改革室のイノベーション推進部の部長も兼務します。
デジタル変革を社内のどこで引き起こすのかは、どの企業でも難しいテーマかと思います。飛び地に新しい事業を起こす新規ビジネスの探索ではなく、既存ビジネスの深化として業務に近いところにメスをいれようとすると関係するリソースはレガシー側にあることから、従来の情報システムに近いところでないと変革は起こせません。
一般企業におけるIT部門に相当する「業務プロセス改革室」は、その後2019年に「デジタル変革室」に改称されます。野村さんは、担当するイノベーション推進部の機能を進化させていきます。
当初は、お客さま向けシステムを担当する「サービスイノベーションチーム」と、社内の業務システムを担当する「業務イノベーションチーム」の2チームに分かれていましたが、これに加えて業務カットではなくテクノロジーカットでソリューションを企画・開発する「テクノロジードリブン」のチームを新設しました。
そして2019年春には、それまでホスト部隊の配下にいたデータ担当チームをこちらに引き入れて、長年の悲願だった「データドリブンのチーム」を新たに作ります。これでようやく、テクノロジーとデータを武器に自分たちから能動的にシステム戦略の提案ができる体制を整えます。イノベーション推進部の人員は、2017年の15名から現在では40名に拡大しています。