
企業においてデジタル化やDXの推進に取り組むなか、多くの企業が人材、とりわけ「デジタル人材」の不足に頭を悩ませているのではないでしょうか。そこで、今回紹介するのは『デジタル人材育成宣言「デジタル化&DX」の現状と人材育成』(クロスメディア・パブリッシング、角田仁 著)です。角田氏は、東京海上日動火災保険(以下、東京海上日動)で約30年間IT戦略などを担当し、大学教員に転身後、2021年4月にデジタル人材育成学会を設立。本書のなかでもユーザー企業を主語に、オールジャパンとしてどのようにデジタル人材を育成していくのかを説いています。
ユーザー企業でDXが進まないワケ
角田氏の著書『デジタル人材育成宣言「デジタル化&DX」の現状と人材育成』では、ユーザー企業を主眼においてデジタル人材の育成について持論が展開されています。第1部では、日本企業のデジタル化とDXの取り組みの現状からデジタル人材の不足状況が整理されており、第2部では人材育成のために何をすべきかが述べられています。また、著者自身のデジタル人材育成の具体アクションとして、学会設立の経緯についても触れられています。今回は本書からユーザー企業の現状と、著者が提言する人材育成を抜粋して紹介します。
本題に入る前にまずは、ユーザー企業のDXの現状を整理しましょう。デジタル化やDXは、2016年頃からグローバルで注目が集まりました。日本企業においては、2018年頃から専門組織が作られ始め、著者の調べでは大企業の多くで設置済みだと言います(表1)。しかし組織はできたものの、デジタル案件を進めるにあたり、各企業で人材や予算、技術といったリソース不足が露呈したそうです。

(出典:『デジタル人材育成宣言「デジタル化&DX」の現状と人材育成』より作成)
特にデジタル案件では、データサイエンティスト、AIやIoTの専門家、セキュリティのスペシャリストが必要だと言われています。読者の皆さまの会社でも、狭義のデジタル人材は不足しているのではないでしょうか。本書ではこうした人材不足の背景に「ゼネラリスト育成にこだわり続け、スペシャリストを中長期的に育成してこなかった人事的な問題」だと指摘しています。
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小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)
EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。
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