アナログが山積する不動産業界にITで挑む
あらゆる業界業種でDXが叫ばれている中で、まだまだアナログな慣習や業務が残っているところも少なくない。その中でも多くの人がユーザーとしても“非デジタル”な面を感じているのが「不動産」ではないだろうか。この春から新生活を始めたという人ならば、なおのこと実感しているかもしれないが、いまだに紙を介したやり取りが多いだけでなく、情報の非対称性も解消できていない。企業として取り引きする際にも、業界特有のアナログな商習慣などに疑問をもった人も多いだろう。
とはいえ、暗い話ばかりでもない。2021年5月にデジタル改革関連法が成立すると、宅地建物取引業法(宅建業法)が2022年5月18日に改正。不動産取引における「重要事項説明書」や「37条書面」などへの押印が不要となっただけでなく、紙による交付も不要となった。これにより、不動産取引における電子契約化が一気に進んでいくことも期待されるなど、まさに2022年は「不動産DX」における節目の年となるだろう。
そこで、今回はAIを活用した“不動産ビジネスの変革”に挑んでいるGA technologiesで活躍をみせている、田渕恵人氏(取材時点ではRENOSY Xに出向中)と堀恵実氏を訪ねた。
──はじめに、お二人のプロフィールを教えてください。
田渕恵人氏(以下、田渕氏):新卒でGA technologiesに入社して4年目になります。入社後は、グループ会社のイタンジで「OHEYAGO」というサイトの開発責任者を務め、2020年にはグッドデザイン賞を受賞することができました。現在は、RENOSY Xで「MORTGAGE GATEWAY by RENOSY」という、不動産会社や金融機関向けの住宅ローン申込プラットフォームサービスを開発しています。これは、今まで紙で行われていた申し込み手続きについて、Web上で対応できるように支援するシステムです。
──入社4年目でシニアマネージャーとはすごいですね、貴社でも異例の昇進スピードではないですか。
堀恵実氏(以下、堀氏):とても早いですし、すごいことだと思います。私は、2019年に第二新卒として入社しており、AI Strategy CenterのDigital Transformation Prototypingチームでチーフを務めています。入社直後は同じ部署のアーロンというアメリカの研究者と共同で“電車のネットワーク”について研究をしていました。その研究の一つの成果として、AIが電車のネットワークを基に、通勤利便性が高く住みやすい街を提案する「BEST BASHO」というプロジェクトに携わっていました。また、その延長線として地域ごとの住みやすさを電車のネットワークはもちろん、店舗や災害、犯罪などのデータを基にスコアで表す研究をしています。最近では、不動産取引時に必要となるハザードリスクの説明を半自動化するようなプロトタイプの開発研究をしています。
実は、2020年に宅建業法が改正されたことによって、ハザードマップ上のどこに物件があるのかを説明することが義務化されました。そのため、各自治体がバラバラの様式で公開しているハザードマップをダウンロードしてきて、洪水や高潮が水防法に基づくかというのを一つずつ調べていき、地図に印をつけてお客様に見せることが必要です。
この少し面倒とも言える部分について、自動で判断してくれるようなプロトタイプ開発を行いました。自分にとっては、ヒアリングから現場への普及までを初めて責任をもって担当したプロジェクトなので、思い入れのあるプロジェクトですね。