一部では実現しているDX21
22世紀のことを考えるだけではなく、私たちが現在を生きる21世紀のDXを考えることも重要だ。「DX21」を考える上で避けて通れないのが、セキュリティとプライバシーである。その理解のヒントになるものとして成田氏が挙げたのが、映画『イーグル・アイ』である。
2008年に公開されたこの映画タイトルにある「イーグル・アイ(鷲の目)」は、米国政府が国土監視用に開発したAIであり、街中の至る所に設置されたデバイスを通してデータを収集している。ある時イーグル・アイは、大統領が憲法違反行為に加担していることを知った。それを基に大統領を排除する決定を下すのだが、肉体を持たないAIは、代わりに2人の主人公を動かして大統領暗殺を遂行しようとする。
この映画がおもしろいのは、映画の世界観を構成する個々の要素技術が、2022年の現時点でかなり利用可能な状態にあることだ。ただし、現在の社会と映画で描かれた社会は大きく違う。現在、組織が個人に関するデータを絶え間なく収集できる状態ではない。イーグル・アイのように、人間が次に何をするべきかを判断する自律的な機械も存在しない。何かを決めるのは人間で、実行も人間が行う。映画が描いたようにデータの循環プロセスはなく、至る所に分断があるのが今の社会だ。
だが今の社会を見ると、スケールは圧倒的に小さくなるが、この循環に限りなく近い姿は実現している。たとえば、BtoCのWebサービスがある。ECサイトには大量のユーザーがいて、スマホやPCという比較的貧弱なデバイスでそのWebサービスを使う傍ら、自分に関するデータを絶え間なく生成している。そのECサイトの裏側にあるのは、プログラムという高度に機械化された存在だ。
店舗の運営では、棚に置く商品を何にするか、その値段をいくらにするかが非常に重要である。ECサイトも同様で、数千点の商品のどれをトップページに表示するか、それをユーザーごとに最適化しなくてはならない。
そして成田氏は、これまで経験した企業との共同プロジェクトの経験を踏まえ、21世紀後半に迎えるであろう、データに基づいた未来の姿を「Ignite 22 Japan」本編にて語っている。