「エンタープライズデータサービスチーム」としてサイロ化解消を目指す
苦労の甲斐あって、「運用の面ではすぐに効果が出ました」と馬場氏、オンプレミスでは1年がかりのプロジェクトで構築していたようなことが、「数クリックでインスタンスを作成できる。しかも拡張も簡単です。ハードウェア、ミドルウェアをずっと監視して何かあれば復旧するという運用から完全に解き放たれたというのは、絶大な効果です」。
運用が楽になっただけではなく、スピード面でもオンプレミスとの違いを実感している。「データを増やしたい、インスタンスを大きくしたい、新しいツールを導入したいなどのユーザーの急な要望に対し、すぐに答えられます。新しい機能がどんどん追加される点も助かっています」と馬場氏は話す。
当初、オンプレミスでデータレイクを構築した際には、情報システム部内のインフラチームの中に担当チームを組成していたものの、その役割はインフラ管理の側面が強く、プラットフォームに格納されているデータを“一貫したガバナンス”を持って管理できているとは言えない状態だったという。しかし、データのサイロ化を打破するという目標に向けてインフラ管理ではなく、“データに責任を負う”チームが必要不可欠であり『エンタープライズデータサービスチーム』という新たな枠組みでのチャレンジに至っている。
「“箱の中にあるデータ”を管理しない限りは、その中でデータがサイロ化してしまいます。従来のやり方ではサイロ化を解消し、データ活用につなげられないという課題がありました」(馬場氏)
そこでエンタープライズデータサービスチームでは、データウェアハウスにどのようなデータを入れるのか、どのようにデータを利用するかなど、“データそのもの”を適切に管理するための役割を担っている。「データがサイロ化すれば、それを管理する組織もサイロ化し、データに関するナレッジもサイロ化していきます。データと共にナレッジを集約管理することで、エンタープライズデータサービスチームがユーザーにとってのリポジトリとなり、社内のデータ利活用に関する活動全体の底上げに寄与したいと考えています」と馬場氏。ディレクトリ構造、データモデルなどについても踏み込んで管理することで、サイロ化の解消を図っているという。
こうしたいくつかの取り組みが奏功し、データにアクセスしたい人は『エンタープライズデータサービスチームに問い合わせる』という文化も生まれている。この効果は数字にも表れており、「オンプレミスのデータ基盤のときは、データ活用のプロジェクト数は17でした。それに対して、新体制での取り組み後には、新たなデータ基盤が本格的に立ち上がってわずか2年で130を数えます。データ利活用の加速はかなり進んでいると思います」と笑顔で語る。