「ビッグテックの不振は一過性。より大局的な視点を」本当に曲がり角?福田康隆氏にIT業界の今後を訊く
【インタビュー前編】「SaaSだから」の特別扱いに方向転換の兆し、利益重視の姿勢に原点回帰

2022年後半から、好調を続けてきたGAFAMなどのビッグテック企業のビジネスの不振が数多く伝えられている。それを受けこれまで順調に成長してきたIT企業のビジネスが、曲がり角を向かえているのではとの憶測もある。しかし、「長いスパンで見れば、一過性のトレンドに過ぎないだろう」と言うのは、ジャパン・クラウド・コンサルティング代表の福田康隆氏だ。新型コロナウイルスのパンデミックを経験してデジタル化、オンライン化が加速する中、IT業界はどのように変化していくのか。福田氏に現状のIT業界の変化について話を訊いた。
ビッグテックが大規模リストラ、転換期を迎えたのか

デジタル化が進み、DXの必要性が多くの企業で認知されるようになった。新型コロナウイルスのパンデミックへの対応で、生活やビジネスのあらゆるシーンでオンライン化が加速している。これらが追い風となり、好調な業績を記録したITベンダーは多い。
とはいえ昨年後半くらいから、その雲行きが怪しくなってきた。オンライン化が進む中での急激な需要の増加に対応するために、多くのITベンダーが短期間に一気に人員を増やした。その反動が表れ、Facebookのメタやアマゾン、マイクロソフトらが1万人規模の社員削減を明らかにしている。
さらにこれまで急成長を続け、様々な企業を買収し拡大を続けてきたSaaSのトップベンダーSalesforceも、成長率が鈍化し人員削減せざるを得なくなっている。ビッグテック企業を中心としたIT業界の隆盛も、いよいよ大きな転換期を向かえたのだろうか。
福田氏はこれらビッグテックの不振は、一過性のトレンドに過ぎないと指摘する。新型コロナウイルスの市場変化に対応するため、ここ3年ほどで一気に膨張したものが元に戻っているだけだと語る。「ほとんどの会社の株価を見ても、2020年に急激に上がり、それが以前の水準に戻っています。そういう意味でも、現状の動向は一過性のトレンドだと捉えています」と言う。
労働人口の減る日本企業はもちろん、グローバルで共通の企業課題に生産性の向上がある。生産性を上げるには、まずは人を増やす。人を増やすだけでは効率が上がらない。さらには日本では働き手が不足して人員はおいそれと増やせない。結果的にITの活用が、欠かせない。
そう考えれば、多くのIT企業の業績は今後もまだまだ伸びると考えられる。「IT業界の中では、ハードウェアからソフトウェアへという流れがここ20年ほど続いています。ソフトウェアビジネスの成長はこれからも続くでしょう」と福田氏は言う。
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押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)
メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長1978年生まれ。立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア...
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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