「フロント統合とSI 工業化で環境変化への適応戦略を支援する Cosminexus(前編)」はこちら
SI 工業化とフロント統合により新たな価値を創造
日立では、高品質・安定稼働を維持したままシステムを統合する手段として「SIの工業化」を提案している。経験をよりどころにしたシステム開発では、往々にして考慮すべき項目を見落としてしまうからだ。
まず設計指針の共有で、SI品質を向上させる必要がある。そしてSIノウハウをシステム化したSI支援ツールを提供し、SIの工業化を推進しようとしているところだと言う。新しいサービス創出の前提は、基盤の安定だ。
そしてシステム開発におけるイノベーションのためには、従来の価値観で一方的にサービスレベルを上げるだけでなく、プラスαの価値観も提供できなければならない。そのために不可欠となるのが、仮説検証の繰り返しだ。そしてその主舞台となるのが、フロントのサービスになる。新しい価値観の仮説を立て、システムを改修する。価値観にリーチする新業務を立ち上げ、実行して検証する。
前述したビデオレンタルビジネスで考えると、例えば顧客に代わり、適切なDVD を検索する電話注文サービスを構築するとしよう。その場合の業務フローは、オペレーターが顧客からの電話を受ける、本人確認、興味のヒヤリング、お勧めコンテンツ検索、コンテンツ紹介、受注手続きというものだ。
プロトタイピングで要件のギャップを解消する
業務の専門知識を持つ主管部門がフローを考え、システム部門に新システム構築の依頼が文書や口頭で伝えられる。ここで注意しなければならないのは、システム部門のメンバーは実際に顧客に接しているわけではないため、どうしても業務部門とのギャップが生じることだ。そのため業務要件の認識合わせに時間がかかり、開発が長期化してしまう。
では、フロント統合による業務アプリケーション開発において、なすべきことは何か。尾花氏は「プロトタイピングによる業務手順の見える化と共有化で、要件のギャップを解消すべき」と提言する。さらに単なる見える化では、見に来ない限り価値観の共有ができないので「見せる化」が必要だと言う。そして仕様変更を最小化し、短期開発を実現する。
プロトタイピングで業務手順を見える化し、業務手順を「共有」しながら仕様を検討し、プロトタイプとして構築したシステムと既存システムとを連携できるようにアプリ開発する。「この三つの段階を踏んでいかない限り、新しい価値観を生むシステムは作れない」(尾花氏)。さらにこの経緯も貴重な知識・ノウハウとなる。これは自分たちの苦労した経験、やってはいけないことの蓄積だけではなく、新しい価値を見つけ出すための模索の経緯でもある。イノベーションのためには、この二種類の知識・ノウハウを効果的に活用しなければならない。もちろん、この検証の経緯も暗黙知にしてはいけない。