HR領域の転換期は2011年 “プロアクティブ”へ変化
──マッキニス-デイさんは、名だたるIT企業でHR責任者としてビジネスを加速させるための人事改革、企業文化の醸成を担当されました。ビッグテックのHR領域は、どのように変化していると感じていますか。
私がテクノロジー業界に飛び込んだのは27年前のことです。同業界に身を置いてから最初の17年は顧客の人事部門を支える立場として、直近10年は自社の人事責任者として、HR領域の変遷を見てきました。
他の領域と同様、HR領域もテクノロジーの変遷にともなって大きく変化してきました。少し前なら事後対応せざるを得なかったことも、データやAI、自動化を駆使することで、“プロアクティブ”(事前対応)に対応できるようになっています。
“リアクティブ”(事後対応)から“プロアクティブ”(事前対応)に転じたタイミングは、組織によって異なりますね。ただ一つ言えるのは、DXが進んでいる企業ほど、人事部門の動きも早いということ。私自身の経験で言えば、HR領域全体におけるターニングポイントは2011年です。テクノロジー業界全体がクラウドにシフトし、ヒューマンキャピタルマネジメント(人的資源管理)を積極的に取り入れるようになった頃から、一気にプロアクティブ化が進んだと感じています。
──2022年には、UiPathのCPO(最高人事責任者)に就任されました。なぜ、UiPathへ移られたのでしょうか?
UiPathに移った理由は3つあります。1つ目は同社がイノベーティブであること。2つ目は急成長企業のど真ん中で働けること。そして3つ目は、CPOとして世界の人事部門のロールモデルとなるようなHRオートメーションの成功モデルを生み出せると確信したからです。
データのサイロ化で業務が煩雑に
──企業の人事部門は、どのような課題を抱えているのでしょうか。
多くの人事部門が抱えている課題の元凶は、多くのデータやシステムがバラバラに存在し、連携できていないことにあります。戦略を立案する前に、点在するデータを収集、分析し、仮説や戦略を立て、それをベースに意思決定を下すといったステップを踏まなければなりません。たとえ一部がデジタル化・自動化されていたとしても、一連の業務の中で、結局はデータを集めたり、レポートを書き上げたりといった手作業が発生し、こうした業務に追われてしまうのです。
また、人事部門は全社員のデータを蓄積している“データの宝庫”でもあります。しかし、個人情報のため取り扱いには厳重な注意が必要で、多くの社員は容易にアクセスできないこともあり、うまく活用できていません。宝の持ち腐れとなっているのです。