参加者(敬称略)
(写真上段左から)
- 新井志乃(LINEヤフー 情報システム本部 データマネジメント部 部長)
- 櫻井佳子(資生堂インタラクティブビューティー IT本部 デジタルプラットフォーム部 部長)
- 古川晴子(サントリーシステムテクノロジー ビジネスプロセス改革部 課長)
- 梶井由起子(東急 デジタルプラットフォーム ITソリューショングループ 主査)
- 柴田美貴(出光興産 デジタル・ICT推進部 主任部員〔コーポレートシステム担当〕)
- 渡部志帆(ベネッセホールディングス データソリューション部 新領域開拓課)
- 山口理栄(青山学院大学 社会情報学研究科 ADPISAプロジェクト プロジェクト教授)
(写真下段左から)
目下の課題は「2025年の崖」と「DXの並走」
酒井真弓(以下、酒井):第1回の辻さんへの取材では、クラウドサービスやローコード開発ツールを使うことで、極力開発しないスタイルに移行中だとうかがいました。今はどんなことに取り組んでいるのでしょうか。
辻裕里(以下、辻):当時は、紙やハンコの業務をやっとのことでデジタル化し、COBOLで作られた古いシステムをどうするか整理している最中でしたね。一番大きかったのは、やはりコロナ禍という外圧による変化ですが、元の状態に戻さないために次から次へと新しい種をまいていくのが、今の私の仕事だと思っています。
現在は、いわゆる「2025年の崖」への対応とDXを並走させている状態です。ローコード開発でやろうとしていたことは、ノーコード開発やサービスを利用していこうと考えています。
社内のカルチャーもどんどん変わっています。自動車メーカーの仕事は、良いクルマを作ってお客様に届けること。以前は、ITの世界で言う「運用効率」まであまり考えられていませんでした。私が4年前に入社した当初は、こうした考え方の違いから互いに噛み合わないことも多かったように思います。それが、コネクテッドビジネスに力を入れるようになったことで徐々に変わってきたんです。「今日は10回も運用って言葉が出た!」と密かに感動しています。
生成AI導入で役立った「サイバーセキュリティ部長」の兼務
酒井:生成AI活用に力を入れる企業が増えているようですが、SUBARUはいかがですか?
辻:もちろん取り組んでいます。当社に限らず、多くの大企業が新しい技術にまずは保守的な姿勢を取りますよね。でも、今回ばかりは「それじゃダメだ」と直感し、積極的に使っていこうとしています。
ここで役に立ったのが、私が兼務している「サイバーセキュリティ部」の協力でした。当初は情報漏えいのリスクも取り沙汰されていましたが、だからといってこんなに可能性のある技術を利用禁止にするのはあり得ない。2023年春には「Azure OpenAI Service」上でChatGPTをセキュアに活用できるようにし、まずは希望者300人に使ってもらうなど、セキュリティの面からも教育やルール改定など活用を後押ししました。
今の課題は、生成AIの技術的なことよりも、活用の柱となる人(エバンジェリスト)をどう増やしていくか。現状は私たちIT部門が中心となって社内ワークショップを開催することが多いのですが、「私もワークショップを開催する側に回りたい」と手を挙げてくれるメンバーがもっと出てきてくれたらうれしいですね。