パイロットユーザーの業務が「AIエージェント」で大きく改善
Dreamforce 2024では、このAgentforceをパイロットユーザーとして導入し、成果を挙げた複数の企業が紹介された。そのうちの1社がWileyである。Wileyは理工系、医薬系の学生にお馴染みの学術書に特化した世界的出版社だ。同社のカスタマーサポートに最も多くの問い合わせが来るのは、9月の新学期を前にした時期。学生たちは履修計画を固めつつ、それぞれ必要な教科書を揃えなくてはならず、膨大な量の問い合わせが押し寄せる。以前はチャットボットでのサポート提供をしていたが、Agentforceへの移行で「40%以上の問い合わせの解決率向上」という成果を得た。ケビン・クイグリー氏(Wiley Continuous Improvement担当シニアマネージャー)は、「Agentforceが定型的な問い合わせに対応することで、チームはより複雑な問い合わせに集中することができるようになった」と話す。
クイグリー氏は、導入後の変化を大きく2つ挙げた。1つは、セルフサービスでカバーできる範囲を拡大できたこと。チャットボットでは難しい非定型的な質問にも、Wileyが独自に蓄積してきたナレッジベースを活用して対応できるようになった。もう1つが、顧客の置かれている状況を理解し、個別の質問にスムーズに対応できるようになったことだ。
さらにクイグリー氏は、「Agent Builderを利用することで、より多くのシナリオを簡単に処理できるようになった」と明かす。前述の通り、Agent Builderは、ローコードツールとして提供されるもので、ITに詳しいチームの力を借りる必要もない。カスタマーサポートを担当する製品・サービス担当者が、どのような顧客体験を提供するべきかを踏まえながら指示を記述することに集中できるようになった。Agentforceの導入で、Wileyのカスタマーサポートはチャットボット時代に比べて、柔軟な問い合わせ対応が可能になっている。まさに、これは繁忙期を乗り切る「エージェントフォース」を獲得できたことを意味するだろう。
なお、図4で示したすぐに利用できるエージェントコレクション、Atlas推論エンジン、Agent Builderの提供開始時期は、2024年10月を予定している。ただし、日本での利用はService Cloud向けのみ2024年10月末、Sales Cloud向け、Marketing Cloud向け、Commerce Cloud向けの提供時期は未定とのことだ。また、2025年2月頃には、カスタマイズしたエージェントの動作検証をする「Batch Testing Center」、より高度な検索への対応、音声や画像のようなマルチモーダル対応を予定している。