複雑化したレガシーを刷新へ「データ基盤の再構築」に着手
デジタル中期計画では、次の3ステップに沿ってデジタル活用を段階的に高度化するとしている。まず第1ステップとして、デジタルのスケーラブルな展開を可能にするデジタル基盤を構築し、第2ステップでこの基盤を用いて既存オペレーションを最適化。最終的に第3ステップとして顧客に新たな付加価値を提供するとともに、自社の新たなデジタル収益源の開拓を目指す。
これらのステップを実行するために、重点的に取り組むべき施策として「インフラの整備とセキュリティの強化」「データ基盤の再構築と個別システムのモダナイゼーション」「草の根DX施策・グループ展開」「データ活用・分析」の4つの活動領域を定義している。特に「データ基盤の再構築」には力を入れており、現在4つの施策を進めているという。
1. グループ経営判断を支えるデータ分析
取締役や各事業部門のトップにヒアリングを行い、グループ全体で意思決定を行う際の判断材料として必要なデータ項目を洗い出す。また、的確な意思決定のために必要なデータの「粒度」「入手頻度」などについても、ヒアリングの上定義する。
2. データ統合基盤の構築と継続的なデータ品質確保
上記で洗い出した各種データ項目を基幹システムをはじめとするデータソースから抽出し、いったんデータレイクに溜めた上で、必要に応じてデータを整形してデータウェアハウスやデータマートに格納するという「データ統合基盤」の一連の仕組みを設計・構築する。その際には、「データの入手性向上」「データの民主化」「AIの学習に適した形式」といった点に留意したという。
「必要なデータをいったんすべてデータレイクに集める仕組みにしたことで、基幹システムなどのデータソースの稼働に影響を与えることなくデータを収集できるようにするとともに、データのオーナーシップもデータレイクにデータを移した時点で事業部門から全社データ部門に移管して、データを全社の資産として広く使えるようにしました」(奥山氏)
3. データ連携基盤の構築とアプリケーション間連携の刷新
かつては各システムが互いに1対1でバッチ連携していたため、システム間の連携処理が極めて複雑化していた。そこでレガシーシステムのモダナイゼーションに合わせて、全社共通の「データハブ」を新たに導入し、システム間連携の際には必ずこの共通データハブを経由するようにした。このような疎結合アーキテクチャを新たに採用することで、アプリケーション移行時の切替工数の削減を図った。
4. グループ・グローバルでのマスターデータ標準化の推進
複数のシステムを互いにスムーズに連携させながら、先述のフィードバック・ループを高速に回していくためには、各システムが共通のデータ体系を共有できるようマスターデータの標準化作業を行う必要がある。そのためにまずは「何を標準化するのか」「データのオーナーは誰か」といったマスターデータの「原理・原則」を定義し、これに沿ったデータ、業務、システムの設計・実装を行う。
さらには、こうしたマスターデータ標準化の活動が形骸化しないよう、データガバナンスのための組織とプロセスを定義し、継続的にマスターデータのメンテナンスを行いながら活動の永続化を目指す。