生成AIなど導入で、現場発「草の根DX」の土壌を整備
前出の4つの活動領域のうち、「データ活用・分析」については主にAIを活用したソリューション開発や業務改善に取り組んでいる。たとえば、空中からの画像データを基にAIが水田の稲の発育状況を分析し、その結果を同社のスマート農機に送り込んで自動的に肥料の散布量を調整するといったソリューションの開発が進められているという。
生成AIも積極的に活用しており、現在では社内でChatGPTを安全に利用できる環境を社員1,200人を対象に提供しているほか、RAG技術を使って社内情報と生成AIを連携させて過去のナレッジを有効活用できる仕組みも実現した。
「RAGを使った社内情報の検索の精度は、データの前処理のやり方に大きく左右されます。現時点ではシンプルな文章については比較的精度を出しやすい半面、表やロジックツリーなどのデータは精度を出しにくいため、現在データを構造化する方法を様々試しながらノウハウを蓄積しているところです」(奥山氏)
また「草の根DX」と呼ばれる、現場発のボトムアップ型のデジタル活用にも力を入れている。業務部門の社員の中にも、個人的な興味から生成AIやローコード/ノーコードツール、RPAなどを積極的に活用して、自らの業務生産性の向上に積極的に取り組む社員は存在する。そこで、そのような社員による草の根DXの取り組みを発掘し、会社としてサポートして盛り上げることで“現場発のユースケース”を作り上げ、他の現場へと横展開することで、全社的にデジタル活用の機運を高めることを狙っているという。具体的には、現場の先進ユーザーたちを集めた社内コミュニティを立ち上げ、互いに情報を交換したり、ベンダーの担当者を招聘した勉強会を開催したりといった活動を展開している。
さらにはこうしたボトムアップの活動とともに、トップダウンの活動も並行して行っているという。
「経営会議で毎回社内のデジタル活動の報告を行う時間をとってもらって、社内の様々な事例や新たな取り組みを説明しています。こうして経営層への情報発信も並行して行うことで、ボトムアップとトップダウンの双方から認知拡大とテーマ発掘を進めています」(奥山氏)