日産自動車がCDPで「顧客体験価値の向上」に挑む、販売店との連携強化へ 既に新車購入意向度を算出も
直面した顧客の行動変容、変わる顧客接点をどう拡充する?

2025年6月の合意を目指し、本田技研工業(Honda)との経営統合へ向けて本格的な協議が進む日産自動車。上流での戦略的施策が進行する中、事業活動を下支えするDXもまた加速しつつある。オンラインとリアル店舗双方の顧客体験価値を向上することを目的とした「CDP(Customer Data Platform)」の構築・運用もその1つだ。日産におけるCDPの構想や目的、実践までの経緯と現在地、運用体制や成果に至るまで、同プロジェクトの責任者である日産自動車の北原寛樹氏、そしてパートナーのインキュデータの末留辰也氏にうかがった。
日産自動車は、顧客の行動変容にどう対応する?
2024年3月に発表された日産自動車の中期経営計画『The Arc』では、価値・競争力・収益性の向上を柱とし、マーケット別の具体的な数値目標が盛り込まれている。主要マーケットの1つである日本市場においては、販売台数を2023年度比で9万台増加、2026年度には年間60万台を目指すとしており、デジタル化が進む市場環境において、店舗とオンラインの融合などDXによる“顧客体験価値(CX)の向上”が重要なカギを握ることは間違いない。
国内市場の購買体験DXを担当する日産自動車の北原氏は、「マーケティングには、一貫性を保つためにグローバル規模でガバナンスやルールが存在する。しかし、一般消費者の購買行動は国・地域によって大きく異なるため、それぞれの市場にあわせたDXが求められる」と語る。その基礎となるCDP(Customer Data Platform)、通称「C360」のプロジェクトは、世の中のデジタル化への流れが加速していた2023年頃にスタートし、直後のコロナ禍で加速。多くのステークホルダーを巻き込みつつ、現場での活用を進めてきた。
その起点となったのは、インターネットやモバイル端末の普及にともなう「顧客の購買行動変容」への対応ニーズの高まりだ。元々、日産自動車の国内における自動車販売チャネルはリアル店舗がメインであり、消費者は販売店に出向くことで販売員とのコミュニケーションを通じて商品理解を深め、購入へと至っていた。しかし現在は、他社製品との比較も含め、商品検討段階での情報収集・検討の場がオンラインに移り、比例して販売店への来訪数が減ってきている。それだけでなく、販売店への来訪時には購入意思が固まりつつあるタイミングであり、オンラインで得た情報の確認・試乗など、店舗に求められる役割や目的も大きく変化しているという。
北原氏は、「高額な買い物ということもあり、オンラインとリアル店舗を何度か行き来して検討するという方が多い。そこでオンライン・オフラインを問わず、お客様の状況を推し量り、それにあわせてタイムリーかつ的確に情報を提供し、コミュニケーションを取る必要が生じている。顧客をより理解するため、CDPのニーズが急速に高まってきた」と施策に至った課題やきっかけを語る。

日産自動車では、顧客のニーズやインサイトをつかむことを目的として、様々な市場調査を実施してきた。また、販売店で収集された顧客データも潤沢に有する。しかし、そうしたデータはそれぞれのシステムに格納され、サイロ化している傾向にあったという。そこで誰もがアクセスして分析できるようデータのオープン化を図ってきたものの、基本的にはIT部門に事業部側から都度依頼が必要なケースもあった。その結果、データを収集・分析し、顧客を理解するまでには相当の時間がかかっていたという。
「各システムからデータを取り出し、手元のExcelでそれぞれが分析するような形にはなっていた。しかし、取得できるデータや個人の分析スキルにもバラつきが生じており、顧客理解においてスピードだけでなく“深さ”も十分とは言えなかった」と振り返り、「これを解決するためには、データの一元化に加え、分析精度を高める手法の提供などが必要だと考えた」と語る。
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伊藤真美(イトウ マミ)
フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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