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IBM買収後のApptio、日本市場での成長戦略は?製品は? シナジー発揮で新たなステージに進めるか

TBMとFinOpsの認知に課題、事業成長のドライバーは

当面は独立性を維持か、TBM Council Japanはオープン化

 IBMは、現時点では「TBMの裾野を広げる」戦略をとっている。これにより、ApptioやFinOps製品の利用機会を増やすことを目指す。前述したように従来のTBMによるアプローチに加え、IBMのソリューション群にTBMを組み込む、2つのアプローチで展開している。

 この戦略を推進するにあたり、Apptioは当面一定レベルの独立性をもった事業として運用される見通しだ。これまでApptioが築き上げてきたTBMエコシステムとコミュニティの中立性を維持しながら、Apptioの製品をIBMに段階的に統合していく形をとる。なお、Apptioの独立性は、2025年も維持される方針だ。完全統合を急ぐことなく、時間をかけて進めていくこととなるだろう。

 塩塚氏は「TBM、FinOpsをはじめとしたIBM Automationは、IBMとして最注力の投資領域です。開発人材の増強など、投資を強化することで機能改善と強化を加速させています。Kubecostの買収もその一環であり、お客様には安心してApptio製品を利用していただきたい」と述べる。

Apptio株式会社 代表取締役社長 塩塚英己氏
日本アイ・ビー・エム株式会社、Apptio事業部長 塩塚英己氏

 また、グローバルではコンサルティングファームとの協業を推進していると前述したが、このグローバル向けのパートナープログラムを日本市場向けにカスタマイズして導入していく。また、日本ではSIerとの協業も積極的に展開しており、富士通、NEC、日立製作所、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)との連携が始まっている。加えて、IBMのコンサルティングチームを他のコンサルティングファームと同様に捉え、IBMとの連携も深めていくという。

 さらにTBMの普及を目的としたTBM Councilも忘れてはいけない。日本では、TBM Council Japanと共に活動しており、これまでApptioが注力してきたコミュニティ活動だ。2021年に発足したTBM Council Japanでは、四半期に一度のコミュニティギャザリングや、CIOが集まるエグゼクティブラウンドテーブルを不定期に開催している。

 塩塚氏は、「TBMの発展を日本市場でどのように実現していくかを日々議論しています」と話す。その上で来年度以降は、TBM Council Japanの活動をグローバルの動きにあわせてオープンにしていくといい、顧客以外にも参加対象を拡大することで、TBM方法論の普及と発展を一層促進していく。これを受けて、2025年夏を目処にアメリカ大使館後援の元、TBM Council Japanのローンチイベントを開催予定だという。

 加えて、グローバルで大きな盛り上がりを見せているFinOpsについて、FinOps FoundationはTBM Councilよりも規模が大きくなっている状態だという。日本ではまだ成熟度が高いとは言えないが、2024年末にFinOps Foundation Japan Chapterが設立されており、Apptioも創設メンバーとして参画している。2025年は、FinOpsを日本で認知させる活動にも注力していく予定だ。

「TBM」と「FinOps」の価値を伝え、日本企業のDXを支援

 日本では、TBMもFinOpsも黎明期にある。まずはこれらの普及・認知の拡大に注力しなければならない。だからこそ、「DXを実現するためのドライバーがTBMである」とのメッセージを強化。日本がデジタル関連のサービスや商品を輸入する額が輸出額を上回り、収支が赤字になる状態になる「デジタル赤字」を解消するためにも、TBMやFinOpsが有効との認知向上を図る。

 TBMの方法論や必要性、その価値を伝えれば、大抵のCIOからは共感してもらえると塩塚氏。「圧倒的に足りないのは、TBMの存在、それが何かを我々が届けられていないことです。届けるべきCIOに届けられていない。そこが一番のボトルネックでしょう」と述べる。

 FinOpsは、クラウドを本業で利用している企業や、クラウドネイティブなデジタル企業でなければ、その真価を発揮することが難しい。これまでは大手企業を対象としてきたが、今後はデジタルネイティブ企業デジタル型のサービスを展開するスタートアップ企業にも対象を広げ、FinOpsの普及とプロモーションに注力していく予定だ。

 最後に塩塚氏は、既存のApptio顧客には「IBMはこの領域に継続的に投資し、Apptio製品および関連製品の機能強化を加速させていきますので、安心して利用していただきたい」と述べる。また、新規顧客に対しては「IBM自身がTBMやFinOpsの価値を明確に伝える必要がある」と強調した上で、データドリブンにビジネスを可視化し、事業部門や経営陣との関係性改善に貢献できるソリューションを提供していくと話すのだった。

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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