急務となる「自動車サイバーセキュリティ」の対応、IT部門が知っておくべきSDV時代の基礎知識
【第1回】SDVとは何か? 自動車サイバーセキュリティを取り巻く環境変化

自動車が単なる移動手段から、高度な情報処理とネットワーク機能を備えた「走るコンピュータ」へと進化する“SDV時代”において、サイバーセキュリティは車両の安全性、企業の信頼性を確保する上で不可欠です。本連載では、IT部門の皆さまがITセキュリティの知識を活かしつつ、自動車特有のサイバーセキュリティ課題を理解し、対策を講じるための道筋を示します。
「SDV」の定義、自動車を取り巻く環境変化
皆さまは「自動車」と聞いて、何を思い浮かべ、何を求めますか? 当然ながら、時代にあわせて自動車に求めることも変化しています。一般的には、自動車に求める価値が変化する大きな要因として、主に以下があげられます。
- ライフスタイルの変化
- デジタルをはじめとする新技術との融合
- 環境性能への要求の高まり
- 安全性への要求の高まり
- モビリティ業界における競争環境の変化
環境意識の高まり、技術の進化によりEV(電気自動車)が市場に増えており、通信やデータなどのデジタル技術の進化によって、ユーザーからは「スマートフォンのように便利に自動車を使いたい」というニーズも生まれてきました。そして、これら1~5に共通するキーワードがこそが「SDV」なのです。
SDVは、Software Defined Vehicleの略称であり、文字通り“自動車がソフトウェアで定義される”、すなわちソフトウェアが自動車の価値や意義を決定することを意味しています。従来の自動車は、ハードウェア(エンジンや車体、その他車載機器)によって性能が決まり、自動車を購入した時点が最新で、それ以降は古くなるという性質をもっていました。一方、SDVでは、ソフトウェアが性能や価値の中心となり、ソフトウェアを更新することで定期的に最新の状態を保てるようになります。なお、SDVの主な機能には以下のようなものがあります。
- ソフトウェアによる機能制御
- OTA(Over The Air)によるソフトウェアのアップデート
- パーソナライズ
- 新しいサービスの創出、サービス連携
上記機能は、既に他のデバイスで実現されていますよね。そう、スマートフォンです。
「移動する」という機能はスマートフォンにはないものの、ユーザーが求めることを実現する1つのデバイスとして、その機能や価値はスマートフォンと同様にもたらされるようになるのです。当然、ユーザーからすれば、スマートフォンで当たり前のように実現できることが自動車ではできない、となればユーザー満足度の低下につながることも考えられます。
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小田 章展(オダ アキノブ)
VicOne株式会社 日本地域代表 ヴァイスプレジデント 兼 セールス & ビジネス開発リード
自動車業界でのカーナビ・カーオーディオの設計開発、エレクトロニクス商社でのFAE・マーケティングを経て、IoT技術の登場以降は事業開発やコンサルティングなどで幅広い経験を積み、トレンドマイクロに入社。現...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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