社会インフラレベルの要求水準に対応できるクラウドコンピューティング環境をめざす
舘野
IT投資の最適化と効率的な利用という意味で、仮想化と同時に注目されているのがクラウドコンピューティングだと思います。いわゆる「所有」から「利用」への流れというわけですが、日立ではクラウドにどのように取り組んでいるのでしょうか。
大枝
これまでクラウドといえばAmazonやGoogleが代表格で、主にコンシューマ向けのサービスから入ってきました。なお、一般的な値ですが、そこで提供されているサービスの信頼性はスリー・ナイン、99.9%以下とされています。つまり、年間で約9 時間のダウンタイムを許容しているわけです。それでは高い信頼性を要求するエンタープライズクラスには適用できません。 日立の使命は、社会インフラレベルの要求水準に対応できる、高信頼なクラウドを作り上げることだと考えています。つまり、これまでクラウドの良さとして考えられてきた導入コスト、導入スピード、システム柔軟性に、信頼性、セキュリティ、環境への配慮を加える必要があるのです。そこで私どもは2009年6月、高信頼、高セキュリティなクラウドコンピューティング環境の実現をめざして日立クラウドソリューション Harmonious Cloud(ハーモニアスクラウド)を体系化し、3つのソリューションを提供しています(図 2)。
まずビジネスPaaSソリューションは、ITプラットフォームリソースをクラウドサービスとしてオンデマンドで提供し、コストや導入時間を短縮するものです。ストレージの仮想化技術と日立のサーバ仮想化機構「Virtage(バタージュ)」などを組み合わせて環境配慮型データセンターにある「Harmonious Cloud センター」内に構築したITリソースを、ネットワークを介してサービスとして提供しています。
またビジネスSaaSソリューションにより業務アプリケーションをクラウドサービスとして提供し、標準的な業務機能を低コスト、短期間で導入することを可能にします。具体的なSaaSとして、日立が過去10 年にわたり約40,000 社、約400 業種* のお客さまに企業間取引の場を提供してきた、企業間ビジネスメディアサービス「TWX-21」などがあります。
そしてプライベートクラウドソリューションは、お客さま企業内でのクラウドシステム構築を支援します。業務システム横断で ITリソースを効率的に利用したい、業務データや業務ロジックを社外に出したくないといったお客さまにお勧めのソリューションになっています。 * 2009 年、日立調べ
舘野
クラウド導入には、サーバ、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアなど、総合的な取り組みが必要だと思います。サポート体制はいかがでしょうか。
岩崎
プラットフォームの専門部隊として、ソリューションを提供していたプラットフォームソリューション事業部内に、2009年 4月、クラウドの推進部隊を設立しました。この部隊を中心に Harmonious Cloudを提供し、数多くの反響をいただいています。 お客さまは現在、クラウドに対してさまざまな期待を持っていると思います。ところが実際に使い始めると、安全性など色々な課題に直面することになります。たとえばITリソースを共有する場合、同時稼働システムの影響で性能が落ちる可能性があります。また当然、他のシステムからデータが見えないようにするなどセキュリティも重要です。このような課題に対してHarmonious Cloud では、たとえばサーバ、ストレージ、ネットワークの各レイヤにおいて、ユーザーの独立性を確保し高いセキュリティを実現しています。また、CPU・メモリー・ストレージなどのITリソースをユーザーや業務ごとに割り当てることができ、性能面でも安心して利用できるなど、お客さまが必要とするレベルのクラウドコンピューティング環境を実現できます。