日立のエンタープライズストレージの強さその理由と今後の展開
舘野
クラウドコンピューティングのビジネスでは、ユーザー企業だけでなく、サービスプロバイダーにもアプローチしていくことになると思います。パートナー戦略についてはいかがお考えでしょうか。また日立のストレージのユーザー企業に業種などの傾向があればお聞かせください。
岩崎
特にプロバイダーだけに限らず、SIerなど幅広くビジネスパートナーを求めています。そして一緒になってエンドユーザーにトータルのストレージシステム、クラウドコンピューティング環境を提供、という方向性で展開しています。
大枝
日立のエンタープライズストレージの伝統的なお客さまは金融業ですが、海外ではデータセンターを展開している大手サービスプロバイダーも日立のお客さまになっていただいています。また、性能、信頼性の要求が高いWeb2.0 の大手も何社もユーザーになっていただいている。現在では業種的な偏りというのは見られず、幅広く日立のストレージを導入いただいています。
ストレージはIT全体の中では地味な存在ですが、当然ながらIT システムの基盤となるものです。エンタープライズレベルのストレージは、全世界で日立を含む3社での寡占状態になっていますが、その中でも日立がトップシェア* を維持しています。* エンタープライズアレイ、容量ベース 調査会社レポートによる日立調べ(2009 年6月時)
舘野
ストレージにおいて日立がそこまで強い理由はどこにあるのでしょうか。
岩崎
1970年代、IBM社のメインフレームにコンパチブルなストレージ製品を日立が出したわけですが、そこで培ったディスク技術を、その後のオープン化の流れの中でも展開し、ずっとモノづくりにこだわってきたことが、今の日立のストレージを支えていると考えています。
大枝
開発着手が早かったことも大きいと思います。IBM社が世界最初のハードディスクRAMACを出したのが1957年で、日立は 1960年代には小田原工場で磁気ディスク装置を作りだしていました。その後も1990 年代のRAID、2000 年代の仮想化技術など色々な技術に挑戦し、それを2段も3段もブラッシュアップすることで、私どもの事業を作り上げてきたのです。
株式会社アイ・ティ・アール
シニアアナリスト 舘野真人氏
舘野
最近のユーザー動向調査を見ると、厳しい経済環境下でもデータ統合、データ分析のための投資への意欲が確認できます。関連した取り組みと、今後の活動における基本方針などをお聞かせください。
大枝
日立は現在、大量の実業データとIT リソースを活用し、知識をサービスとして提供するKaaS(Knowledge as a Service)を提案し、実現に向けて取り組んでいます。そこで特に重要なのは、大量データから付加価値の高い情報、知識を生み出す知識化基盤の実現です。そのためにはさまざまな種類のデータを大量に蓄積し、それがすぐに使える状態を、適正なコストで提供できなければなりません。そこでストレージデバイスの仮想化技術を使い、データの利用価値の時間的な変化やデータライフサイクルに応じて、オンラインストレージからオフラインストレージまで階層的に保管し、ストレージの最適な活用を実現します。
岩崎
当然、グリーンIT に対しても、仮想化によるストレージ構成の最適化、低消費電力メディアの利用、ディスクの電源制御による省電力化など、さまざまな方向から取り組んでいます。またエネルギー技術とITを融合させることで実現するスマートグリッド(次世代電力網)のように、新たな社会インフラを作り上げていこうという動きが活発です。日立でなければできないことをやらなければならないと、私どもは考えているのです。