
2025年10月13日から米国ラスベガスで開催されたOracleの年次イベントは、名称を「Oracle CloudWorld」から「Oracle AI World」へと変更し、「AI時代」の本格的な到来をあらためて宣言した。イベントで最も注目を集めたのは、同社 会長 兼 CTO ラリー・エリソン氏による基調講演。しかし、講演は急遽1時間開始が遅れ、ライブ中継形式に変更された。本人がステージにいない中継状態とはいえ、エリソン氏の講演は予定時間を超え、AI時代に変貌する“新たな世界”についての話題が尽きなかった。
産業革命を超える「AIの夜明け」 Oracleの大規模インフラ戦略

(写真提供:Oracle)
ラリー・エリソン氏は基調講演の冒頭、「AI技術」こそが人類史上最も重要かつ価値の高い技術だと断言した。そもそもAIの発展は、大きく二段階に分けられるとして、一つは現在進行形でOpenAIなど複数の企業が膨大なインターネット上の公開データを用いて、「巨大なAIモデル」を構築・訓練している段階だ。このフェーズにおける最新のAIモデルは、人間の脳が複数の領域から成るように、複数のニューラルネットワークから構成される「マルチモーダル」モデルであり、視覚や言語、認識、分類、推論といった多様なデータに対応可能だ。
エリソン氏は、Oracleこそがマルチモーダル型AIモデルの学習領域における主要プレーヤーだという。実際に同社はAIモデルの学習のため、大規模データセンターの建設に注力している。その一例がテキサス州アビリーンでOpenAI向けに建設している、世界最大級のAIクラスターだ。2024年6月に着工し、大規模なGPU環境を提供予定だとする。
この“AIデータセンター”が完全にプロビジョニングされた際には、45万台以上のNVIDIA GB200を搭載するという。施設の電力容量は12億ワットに達し、これは米国で4ベッドルームの住宅100万戸の電力に匹敵する規模だ。また、電力は送電網からだけでなく、オンサイトの天然ガスタービン発電でも供給される。Oracleは、イーロン・マスク氏が推進するAI搭載アシスタント「Grok」を含む、他企業よりも多くのマルチモーダル型AIモデルの訓練に関与していると主張した。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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