JAL社内で育てる、事業理解が根底にある“頼れる専門家”
事業価値創出と収益性改善への貢献を期待されていたが、最初から組織体制が整っていたわけではない。当初は「データサイエンティスト」と呼べる人がいない状態から、組織へのスキル蓄積を同時進行で進めなくてはならなかった。
諸岡洋佑氏(カスタマーエクスペリエンス本部 マーケティング戦略部 顧客データ戦略室 事業推進グループ)によれば、組織内では、外部パートナーからのサポートを得ながら、課題設定から解決アプローチの導出まで、隣でやっているのを見て学ぶことを繰り返す必要があったという。現在も、内製化を目指して人材の底上げを進めている。とはいえ「データサイエンティストとしてより専門的で高度な分析ができる人材よりも、事業課題をデータで解決できる人材を増やすことを優先している」と話す。パートナーにもこの方針を理解してもらっているとした。
日本航空株式会社 カスタマーエクスペリエンス本部 マーケティング戦略部
顧客データ戦略室 事業推進グループ 諸岡洋佑氏
ゼロから組織を立ち上げたため、事業側との信頼関係の構築に努力する必要があった。今でこそ、顧客データ戦略室に相談が来るようになったが、収益改善に役立つ示唆が得られたとしても、共同でデータ分析を行うメリットを理解してもらえなければ、その先に進めない。事業側にデータの知識がなければ、データ分析で解決可能かがわからない状態で、アイデアを持ち込むことになってしまう。
この場合、そもそもデータ分析で解決できる課題か、別のやり方で解決するべき課題かの切り分けの助言が必要になるし、顧客データ戦略室側も事業ドメイン知識がなければ、切り分けの判断自体が難しい。大野暉宙氏(カスタマーエクスペリエンス本部 マーケティング戦略部 顧客データ戦略室 事業推進グループ)は「2、3年かけて、地道に相互理解を深める取り組みを積み重ね、最近になってようやく事業側からアイデアの相談が来るようになった」と打ち明ける。
その過程で人材交流も生まれた。顧客データ戦略室でデータサイエンティストを育成し、独り立ちを見極めたら、事業側に移ってもらう。逆に、事業側から兼務の形でデータ分析を学んでもらうこともある。データ分析の適性があり、事業ドメイン知識があるので、キャッチアップが非常に早い。外部のパートナーはデータ分析の専門家ではあるが、航空サービスの事業ドメイン知識は持ち合わせていない。航空サービスのビジネスを理解し、事業成長に向けての課題を特定し、データ分析での解決はJALの社員にしかできないことだ。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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