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2025年夏号(EnterpriseZine Press 2025 Summer)特集「“老舗”の中小企業がDX推進できたワケ──有識者・実践者から学ぶトップリーダーの覚悟」

特集:年末特別インタビュー

【特集】激動の「AIエージェント元年」にデータと向き合い続けた6名に聞く、1年の振り返りと来年の展望

2025年末特別インタビュー:「DB Online」編

ドメインデータが重要視される中、「データを補填する」技術に注目か(ミック氏)

2025年の振り返り、2026年の展望

 2025年は、AIに始まりAIに終わる一年でした。年始のDeepSeekショックに端を発し、ヒューマノイドに代表されるフィジカルAIの台頭、動画生成AIと著作権の問題など、AI関連のニュースだけでも枚挙にいとまありません。

 筆者の専門とするデータベース分野を見ると、モデルの開発競争以上に、データが一層重要な資源になりつつあることを実感します。AIが金融、リテール、医療など様々な分野に応用されるにつれて、その分野に特化したデータの重要性が増しています。Gartner社は、2028年までに、企業が使用する生成AIモデルの半分以上がドメイン特化型になると予測しています。

 しかし、ドメイン特化AIが学習に必要とするデータは往々にしてインターネット上には存在しません。企業の基幹系システムのデータが典型ですが、AIがアクセスできる権限を持っていなかったり、利用しやすい形では保存されていなかったりします。モデルの精度が業務に使えるレベルまで引き上げられれば、次にボトルネックになるのはこうしたドメインデータです。

ミック氏
SIerに勤務するエンジニア。主にデータベース分野における専門家として活動した後、米国シリコンバレーで技術探索の業務に従事。現在は自社の技術戦略を策定するチームにおいて技術トレンドの調査を担当。主著『達人に学ぶ DB設計徹底指南書 第2版』、『達人に学ぶ SQL徹底指南書 第2版』(いずれも翔泳社)

 2026年も、AIが重要な成長ドライバーとなることは間違いありませんが、いかにしてAIが活用できるデータセットを準備し管理できるかがカギとなるでしょう。たとえば、難病治療にAIを利用しようとする場合、そもそも希少疾患のデータ自体が十分にないという問題が発生します。こうした問題を解決するために、人工的に生成した合成データ(synthetic data)などの技術が重要になります。AIの業務利用が進展するほど、個人情報・機密データの保護とデータ不足の解消を両立させる技術に注目が集まるでしょう。

AIを目的にしない。経営に自然に組み込んで活用を推進(SOMPOホールディングス 村上明子氏)

2025年の振り返り、2026年の展望

 2025年は、全社としてデータを経営や業務に活かしていこうという動きが具体的に始まり、データを共通言語として議論する場面が増えたと実感できた一年でした。これは特定の部門の取り組みというより、経営全体の意識が変わりつつあることの表れだと受け止めていますし、データを経営の軸に置くという意味でも、とても大きな前進であったと感じています。
 一方で、2024年に描いたデータ活用の理想像に対し、現実にはデータの質や整備状況、活用の前提条件など、多くの課題が存在していました。特に、AIの活用に関して、データが寄与できたところはまだまだ多くないのが現状です。AIは非常に強力な技術ですが、AI活用そのものが目的になってしまうと、かえって価値創造から遠ざかってしまいます。まず何を実現したいのかがあり、そのためにAIをどのように使うのかを考え、その結果として必要なデータが定まる。この順番を丁寧に踏むことの重要性を、2025年を通じて強く感じました。

SOMPOホールディングス株式会社 執行役員常務 グループChief Data Officer(CDaO)
兼 損害保険ジャパン株式会社 執行役員(データドリブン経営推進部長)[CDaO]
AIセーフティ・インスティテュート 所長
村上明子氏

1999年日本アイ・ビー・エム入社。2021年に損保ジャパンに転職し、執行役員Chief Digital Officer(CDO)を経て、2024年4月に執行役員Chief Data Officer(CDaO)、2025年4月にSOMPOホールディングス 執行役員常務 グループCDaOに就任。損害保険におけるデータ活用やデータガバナンスを推進している。政府に設立されたAIセーフティ・インスティテュートの所長も兼任。

 2026年に向けては、AIを「使うかどうか」ではなく、「何を実現したいのか」を起点に、AIとデータの活用を考えていきたいと考えています。AI活用の是非や適用範囲を現実的に見極めながら、その前提となるデータの質や使い方についても、丁寧に議論を重ねていく必要があります。データやAIを目的化するのではなく、経営や業務の意思決定に自然に組み込まれた形で活用していく。その実践を積み重ねていくことが、2026年に向けた次の一年のテーマです。

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