ドメイン特化型自律AIへの移行が鍵。「データからAIへ」支援広げる(データブリックス・ジャパン 笹俊文氏)
2025年の振り返り、2026年の展望
2025年は、企業が日常業務から複雑なタスクまで自動化するAIの価値を認識し、AI活用を実験段階から実用段階へと移行し業務プロセスに積極的に取り入れ始めた、転換点となる年になりました。また、企業がAIエージェントを容易に導入できる、新たな専用ツールも登場しました。
AIで差別化を図るには、ガバナンスの効いた自社データの利活用が不可欠という認識が、経営層の中で広がっています。データブリックスは2025年も、「データからAIへ」の循環への移行を支援してきました。また、主力AIソリューションとなる「Agent Bricks」をリリースし、堅牢なセキュリティとリネージによってガバナンスの効いた自社データ上に、自然言語でエージェントを構築できるようにしました。
データブリックス・ジャパン株式会社
代表取締役社長
笹俊文氏
2023年から現職。20年超のエンタープライズテクノロジーとリーダーシップの経験を活かし、データブリックス・ジャパンを指揮し、業界の垣根なく国内企業に対してデータ・インテリジェンス・プラットフォームの導入を推進する責任を担っている。データブリックス入社以前は、セールスフォース・ジャパンに10年以上勤務し、デジタルマーケティングビジネスユニットの専務執行役員兼ジェネラルマネージャーを務めた。また、インフォアジャパン、JD Edwards(現・日本オラクル)、日本アリバ(現・SAP Ariba)などのテクノロジー企業でも重役を歴任した経験を有する。
2026年、日本企業によるAIエージェント活用の成功を左右する鍵の一つは、汎用エージェントからドメイン特化型の自律AIへの移行になると見込まれます。また、単一エージェントからマルチエージェントのオーケストレーションへ進化すること、同時に、導入後も様々な評価を通じて改善・最適化を図るアプローチをとることが求められるようになるでしょう。
さらに、従業員やお客様の働き方に対応するため、単一プラットフォーム上でマルチモーダルなユースケースへのサポートを拡大することも必要です。既存のワークフローにAIエージェントを組み込み、直感的に使えるようにして、人とAIがシームレスに協働できる世界を構築していくことが求められていくでしょう。
データブリックスは、Agent Bricksなどのソリューション提供や国内におけるユースケースの共有を通じ、幅広い日本企業がより良くAI・データを利活用できるよう、引き続き支援してまいります。
組織の枠を超えたAIガバナンスを。「日本型スタンダード」確立へ(東京海上ホールディングス/AIガバナンス協会 生田目雅史氏)
2025年の振り返り、2026年の展望
2025年を振り返ると、AIエージェントをはじめとする技術革新が一気に進み、AIは企業活動の隅々にまで浸透し始めました。「AI法」の成立など政策変動も相まって、社会全体がAI活用の新たな局面へ踏み出した一年でした。東京海上ホールディングスでも、PKSHA Technology社、Sakana AI社などのスタートアップ投資・提携に加え、米国・OpenAI社やSalesforce社との連携強化や「AIガバナンスに関する基本方針」の策定を通じ、価値創造とリスク管理の両面で環境整備を進めています。AIが社会インフラ化する現在、企業は自社の利益にとどまらず、社会とつながるマルチステークホルダー視点で責任を果たす必要があります。
AIガバナンス協会(AIGA)においては、国内外の多様な企業・専門家の実践知を蓄積・共有し、理念にとどまらない具体的なガバナンス方法の確立を進めてきました。自己診断ツール「AIガバナンスナビ」の運用や、経営意思決定におけるAI活用の議論など、実務に根ざした取り組みが着実に広がっています。
東京海上ホールディングス株式会社 グループCDO
一般社団法人AIガバナンス協会 代表理事
生田目雅史氏
東京大学法学部卒業、ハーバード大学MBA修了。1988年株式会社日本長期信用銀行入行、KPMG、ドイツ証券、モルガンスタンレー証券、ビザ・ワールドワイド、ブラックロック・ジャパンを経て、2018年より東京海上ホールディングス入社。21年常務執行役員グループCDO就任を経て24年より現職。一般社団法人AIガバナンス協会代表理事。
2026年に向け私が最も重視したいのは、日本が主体的に社会的規範づくりに貢献することです。AIの影響は企業の枠を超え、社会全体に及びます。だからこそ、多様な主体が受容可能性を議論し、実践可能なスタンダードを共創していく必要があります。こうした集合知に基づくアプローチこそ「日本型AIガバナンス」であり、世界に示すべき価値あるモデルだと考えます。
2026年、AIGAはマルチステークホルダーが共に議論し、日本らしいAIガバナンスを形づくる基盤をさらに強固にしていきます。AIがもたらす未来をより良いものにするため、ともにAI活用の新たなスタンダードを築いていきましょう。
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EnterpriseZine編集部(エンタープライズジン ヘンシュウブ)
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