長年にわたるクラウドサービスの実績
マイクロソフトは、クラウド・コンピューティングに最近になって取り組み始めたわけではない。インターネットを利用したサービス提供の歴史は古く、1995年にはMSNを、そして1997年にはHotmailのサービスをいち早く展開しており、すでに15 年以上もの実績がある。
1995年に当時のCEO ビル・ゲイツがこれからはインターネットにシフトするという発言をした頃から、マイクロソフトでは継続的にクラウドに注力している。その結果、コンシューマ向けのMSNやHotmailのサービスを起点とするWindows Liveや、ビジネス向けクラウド グループウェアのExchange Online、SharePoint Onlineに代表されるMicrosoftOnline Serviceなどを順次提供してきた。そして、現在ではクラウドのプラットホームサービスであるWindows AzurePlatformを提供するに至っている。
なぜマイクロソフトは、クラウド・コンピューティングのビジネスに注力しているのだろうか。マイクロソフトには、「世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を、最大限に引き出すための支援をする」というカンパニー ミッションがあり、この実現には、より幅広いユーザーが、より高度なITを利用できるようにしていく必要がある。インターネット経由で必要なサービスを必要なときに利用できるクラウドは、まさにその実現のために極めて有効な手段と言える。そのためマイクロソフトは、クラウド・コンピューティングを幅広く展開しているのだ。
全方位のソリューションを展開するマイクロソフトのクラウド
マイクロソフトのクラウドにおける最大の特長は、全方位でサービスを取り揃えているところにある(図1)。他のクラウドのベンダーでは、例えばメールやスケジュール管理だけ、あるいはCRMなどのアプリケーションに特化したもの、プラットホームだけに特化したものが多く、すべてを揃えているところはほとんどないのが現状だ。仮にユーザーがそれらのサービスを選択すると、オンプレミスと連携させる仕組みを構築する必要があり、足りない機能を補うためにクラウドサービス同士を連携するプログラムを構築しなければならない。逆の言い方をすると、ベンダー ロックインのリスクが高まるということだ。
マイクロソフトでは、オンプレミスの幅広い製品群を提供しており、それに相当するクラウドサービスを展開している。これにより、顧客は必要なサービスをオンプレミス、クラウドから選択でき、オンプレミスからクラウドへの移行の手間も大幅に削減できる。オンプレミスのWindows Server OS に相当するクラウドのサービスがWindows Azure だ(図2)。Windows Azureは仮想化の技術を用いたクラウド上のコンピューティングとストレージで構成されており、1 時間当たりコンピューティングなら11.76 円、ストレージなら14.70円から利用できる。
オンプレミスのリレーショナルデータベースであるSQLServerに対応するのが、SQL Azureだ。SQL AzureはSQL Serverと同様の使い勝手を実現しており、まだベータ段階の機能ではあるがSQL Server とSQL Azure のデータベースを同期する機能も提供している。当初マイクロソフトでは、リレーショナル型ではなくKey-Value型のデータベースをクラウドで提供すると発表していたが、顧客のSQL Server への強い要望を取り入れ、SQL Server をクラウドで利用できるようアーキテクチャ変更を行った。Key-Value 型データストアは、WindowsAzureのストレージサービスの1つであるテーブルで実現しており、ユーザーは必要に応じて選択可能となっている。
そして、クラウド上のアプリケーションサーバーに相当するのが、AppFabric だ。AppFabric にはアクセスコントロール機能があり、オンプレミスとクラウドの間でシングルサインオン環境の構築も可能だ。さらに、オンプレミスのExchangeServer、SharePoint Serverに相当するExchange Online、SharePoint Onlineがあり、CRMアプリケーションであるDynamicsCRM に対しては、Dynamics CRM Onlineも用意されている。