全社AI活用率99%のMIXIは、いかにコストを最適化しているのか?CTOが語るインフラ運用戦略
「休日に呼び出されない世界」を目指し、インフラ運用にもAIを積極的に活用
インフラ運用にもAIを積極活用、オンプレ環境の管理を効率化
また、インフラ運用の現場でもAI活用は着々と進んでいる。同社では、ソースコードや利用している外部ライブラリに対する脆弱性を管理するため、セキュリティ分析ツール「Wiz」を活用している。このツールによって、インターネット経由で実際に脆弱性に到達可能かどうかを含めたリスクの可視化が実現した。
ここで得られた膨大な検知データとLLMを組み合わせることで、危険度の分析や影響範囲の確認を自動化し、優先順位をつけて迅速に対処する。結果として、アラートの自動検知を起点とした自律解析が初動対応を高速化させ、担当者の精神的・時間的負荷を削減している。
また、MIXIはオンプレミス環境の維持管理にもAIを活用している。同社の主力サービスの中には、『モンスターストライク』など現在もオンプレミスで運用されているものがあり、さらにグループ会社であるチャリ・ロトが運営する競輪場や、プロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」のホームアリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY」といった物理的なファシリティのネットワーク管理も必要だった。
オンプレミス環境は、パブリッククラウドのように一元管理されたログや構成情報の収集が難しく、機器の配置や接続状況、設定情報の管理が煩雑になりやすい。これに対し、同社はAIエージェントを活用したチャットベースの管理システムを自作することで解決を図ったという。
具体的には、社内で利用しているSlackなどのチャットツールにAIエージェントを組み込み、インフラの構成情報を自然言語で問い合せたり更新したりできる環境を構築。「この機材はどこにあるか」といった質問に対し、AIが各種ログや構成データベースを横断的に検索して回答する。
さらに、物理的な機材を移動させた際にも、チャット経由で「この機材をここに動かした」と報告するだけで、AIが自動的に台帳のデータを書き換える仕組みを実現した。これにより、従来のスプレッドシートや手動での台帳管理にともなう転記漏れや情報の形骸化を防いでいる。
現在は同社のグローバルでの活動も見据え、世界展開におけるインフラづくりも急務になっている。その中で、現時点では日本以外にインフラ設備が設けられていない点を課題に挙げながら、基本的に海外はパブリッククラウドでインフラ環境を整備していくと吉野氏は語った。
MIXIが挑む開発・運用組織の挑戦は、未来に向けた次なるフェーズへと進んでいる。吉野氏が理想として掲げるのは、インフラの障害対応や突発的なトラブルによってエンジニアが夜間や休日に呼び出されることのない運用の世界だ。自動切り替えなどの従来型の可用性設計を徹底したうえで、障害発生時の原因分析や情報収集のプロセスにAIをより深く組み込み、障害復旧までの時間を極限まで短縮する体制づくりが現在も進行中である。
物理的なインフラやネットワークに関する深い知識は、AIが進化するこれからの時代でも決して不要にはならない。むしろ、自社のインフラ構造を正確に理解しているからこそ、AIに対して適切なコンテキストを渡し、より正確な判断や自動化を導き出すことが可能となる。インフラの本質を見極め、AIと共に進化しつづける同社の取り組みは、他企業にとっても今後の道標となるだろう。
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