「財務・会計DX」が声高に叫ばれて久しく、法改正などを背景にシステム導入を進めた企業も少なくない。しかし、その取り組みがどこまで“経営判断の高度化”につながっているのだろうか。本稿では、長年にわたり業界を見てきた永尾裕樹氏が「収益性データモデル」を軸に、CFO組織の変革に向けたアプローチを紹介する。
CFO組織が整えるべき「収益性データモデル」
財務・会計領域のDXは、これまで主に「業務効率化」の文脈で語られてきた。代表例としては、請求書処理の自動化、経費精算のデジタル化、決算早期化、電子帳簿保存法への対応、会計システムの刷新などが挙げられる。いずれも重要な取り組みであり、経理・財務部門の生産性向上を支えてきた。
しかし、業務効率化が進んだからといって、CFO組織が経営判断により深く関与できるとは限らない。会計システムを刷新しても経営会議の資料作成はExcelに依存したまま、BIを導入しても部門ごとに数字の定義が異なり、予算管理システムを整備しても議論は予算実績差異の説明に終始する……こうした企業は少なくない。
たとえば、月次の業績見通しを更新する場面で、営業部門は受注額や案件見込みを重視し、財務部門は会計上の売上や利益を見て、事業部門は粗利や稼働率を基準に状況を説明している。いずれも間違った数字ではない。しかし、どの単位で収益性を見るのか、どの利益指標を判断基準にするのかが揃っていなければ、同じ事業について議論しているようでも投資を増やすべきか、価格を見直すべきか、撤退を検討すべきかといった判断にはつながりにくい。
だからこそ、財務・会計DXの本質は、経理業務を速く処理することではなく、経営判断を速く、深く、正確にすることにある。経済産業省の「デジタルガバナンス・コード3.0」でも、DX経営による企業価値向上や、経営におけるデータ活用・連携の重要性が示されている[1]。財務・会計領域においても、DXは単なる効率化ではなく、経営資源の配分や事業判断と接続されなければならない。
つまり、これからCFO組織に問われることは、数字を見せる仕組みを整えることではなく、収益性をどの単位で捉え、どの基準で投資・撤退・資源配分を判断すべきなのか。そのための仕組みを設計することである。そして、その中核を成すのが「収益性データモデル」である。
[1] 経済産業省「デジタルガバナンス・コード」(最終更新日:2025年9月11日)
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永尾 裕樹(ナガオ ヒロキ)
レバレジーズ・コンサルティング・グループ株式会社
シニアパートナー/デリバリーグループ責任者大手信託銀行、大手コンサルティングファーム等を経て現職。金融機関、エンターテインメント、公共・官公庁、出版・情報サービスなど、幅広い業界のクライアントに対し、戦略、業務改革、IT構想・導入、プロジェクトマネジメント...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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