過去実績にとどまらない価値 「収益性データモデル」による高度化を目指す
収益性データモデルの価値は、過去実績を整理することにとどまらない。将来の投資・撤退・資源配分の判断に活かせる点にある。
人口減少、人件費上昇、採用難、物流費上昇、設備老朽化、市場成長率の低下といった変化は、過去のPLだけを見ていても把握できない。たとえば、足元では黒字の拠点であっても、商圏人口が減少し、人件費が上昇し、設備更新費用も近づいているならば、将来収益性は大きく変わり得る。
同じように、売上規模の大きい顧客が必ずしも“良い顧客”とは限らない。対応工数が大きく、値引きが多く、解約リスクが高ければ、実質的な採算は低い可能性がある。商品やサービスについても売上だけでなく、原価、販促費、在庫負担、サポート工数まで含めて見なければ、正しい判断はできない。
予算管理を将来の意思決定につなげる
収益性データモデルは、予算管理のあり方も変える。従来の予算管理では、年初に立てた予算に対して実績がどうだったのか、差異の要因は何かを説明することに多くの時間が使われてきた。しかし、変化の速い環境では、それだけでは不十分である。重要なことは、差異を説明することではなく、その差異を踏まえて次にどの打ち手を選ぶべきか、判断することだ。
もっとも、表2で示したすべてのレイヤーを一度に整備しようとすると、取り組みは大がかりになり、現場の負荷も高くなる。初手として重要なことは、全社一斉のデータ整備ではなく、主要な事業部や重要な意思決定テーマに絞って、財務指標と事業KPIをひも付けることである。
たとえば、拠点採算を見直したいのであれば、拠点別PLと来店客数、人員数、商圏人口、設備更新費用を接続する。顧客別採算を見直したいのであれば、売上高だけでなく、粗利、値引き、対応工数、解約率を同じ単位で見られるようにする。
最初から完璧なデータモデルを作る必要はない。まずは、経営会議や予算会議で実際に議論されているテーマを一つ選び、「どの財務指標と事業KPIを組み合わせれば、判断が変わるのか」を定義することから始めるべきである。
財務・会計DXを、単なる効率化で終わらせてはならない。CFO組織が「数字の集計者」から「意思決定モデルの設計者」へ進化するとき、財務データは初めて未来の事業判断に変わる。
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永尾 裕樹(ナガオ ヒロキ)
レバレジーズ・コンサルティング・グループ株式会社
シニアパートナー/デリバリーグループ責任者大手信託銀行、大手コンサルティングファーム等を経て現職。金融機関、エンターテインメント、公共・官公庁、出版・情報サービスなど、幅広い業界のクライアントに対し、戦略、業務改革、IT構想・導入、プロジェクトマネジメント...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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