IT 運用の現状
まず、現状のIT 運用の全体像を振り返ってみよう。1990年までの情報システムは、ホスト・コンピューターでの集中処理環境が主であり、以降C/S を中心とする分散環境、Webによるオープン化へと進んできた。このような環境変化は多様化・複雑化するシステム環境への対応を促し、システム運用管理を省力化し、運用品質を確保するためのツールや技術の進化をもたらした。
また、事業の遂行におけるIT 活用度が高まったことで、以前は特定のシステムのお守りをしていれば良かったが、現在ではPC のサポートからアプリケーション・ポートフォリオの管理に至る多様な業務を行わなければならない。そのため、ITILを参照するなどして、ユーザー視点からITサービスを定義して運用業務を標準化するITサービス管理の体制を備えることが不可欠である。こうした背景から、現状では情報システムの運用管理のアーキテクチャは、以下のようにまとめることができる(図1)。
このアーキテクチャで特徴的なのは、SLM(サービスレベル管理)に並んで構成管理が全体のハブとして位置づけられている点だ。複雑化するシステム環境は、テスト/リリース、障害対応、保守計画など様々な局面で不具合を発生させる。IT 資産の棚卸し、構成情報の把握、変更の反映といった作業にかかる労力は格段に増してきており、ツールによる自動化が求められている。
また、SLMも依然として重要な役割を果たしている。これには、システムの利用機会が増え、サービスレベルをユーザー視点でコントロールする必要性が増したのと同時に、調達先であるベンダーを管理する要求が強まったことによる。このようにIT 運用への要求が深化するなかで、運用管理ツールを導入することは効率性および経済性の観点から推奨されるアプローチである。
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