ITプロジェクト炎上の種は「認識のズレ」にある──3層9要素のフレームワークで見極める炎上の兆候
情シス塾 第2回:数々の炎上プロジェクトを経験したすぅ氏が語る「信頼貯金」の貯め方
経験値から導いた、認識のズレを見つける実践メソッド
たとえば要件の解釈では、システムを発注した企業側が「ログイン画面は入っているだろう」と思っていても、システムを開発するベンダー企業側は「要件定義書に記載がないので対象外」と判断した場合、この認識のズレが原因でリリース時に衝突する。スコープの伝達では、経営会議で合意されたスコープが、現場に下りる段階で勝手に縮小され、最終成果物のイメージにギャップが生まれることも少なくない。
関係者間の認識のズレを防ぎ、プロジェクト進行を安定させるための方法として、同氏は「3層9要素」のフレームワークを提示する。このフレームワークは、認識を合わせるべきフェーズを「ゴール」「プロセス」「コンテキスト」の3層に分類し、それぞれをさらに3つの要素に細分化して認識のズレが発生していないかを確認するもの。この3層のいずれかで認識がずれていると、プロジェクトは炎上しやすくなるという。
[クリックすると拡大します]
すぅ氏が提唱するフレームワークの第一段階となる「ゴール層」では、プロジェクトが何を目指すかを揃える。ここには、なぜやるのかを示す「目的(Why)」、どうなれば成功かを示す「成功基準(How much)」、何を作るかを示す「成果物・要件(What)」の3要素が含まれる。たとえば、システムを導入すること自体が目的化してしまい、本来の業務効率化という目的からずれてしまうといったケースは、多くの現場で見られる失敗パターンといえる。
第2の「プロセス層」では、プロジェクトをどう進めるかを揃える。意思決定と実行の担当を明確にする「役割・責任(Who)」、主要なマイルストーンを合意する「スケジュール(When)」、進め方のルールを定義する「進め方(How)」の3要素からなる。これらがあいまいだと、重要なタスクが誰にも引き取られない“浮き玉”の状態になり、進捗が途中で止まってしまう。
第3の「コンテキスト層」では、現場の現状や背景をリアルタイムで揃える。現場が日々行っている業務の制約を理解する「業務前提」、今何が起きているかの最新情報を共有する「状況・進捗」、これから起きそうな懸念を予測する「リスク・課題」の3要素がある。特に状況や進捗の共有において、進捗が遅れていることを関係者に報告せず、直前になって延期を発表して発注企業側に激怒されるケースは、この層のズレが原因である。
同氏はこのフレームワークによって見つかった認識のズレを地道に直していくことで、協力し合える関係性を構築できるという。
「日々の徹底的な認識合わせが“信頼貯金”につながります。できるだけリアルタイムで状況を共有しつづけることで、関係者に安心感が生まれ、徐々に信頼という貯金が積み上がっていく。信頼貯金があれば、不測の事態が起きた際に非難されるのではなく『一緒に乗り越えよう』と協力してくれるようになります」
具体的な行動例としては、議事録に決定事項の主語を必ず書き、誰が何を担当するのかを明確にすること、また雑談から関係者の本音や違和感を拾い上げてメモしておくことなどが挙げられる。メンバーから「少しよろしいですか」と声をかけられた際に5秒だけ手を止めて話を聞く姿勢や、ベンダーからの質問に当日中に1行でも返信するといった行動を積み重ねていくことで、進行の遅延や誤解の連鎖を断つことができるのだ。
この記事は参考になりましたか?
- 情シス塾 講演レポート連載記事一覧
-
- ITプロジェクト炎上の種は「認識のズレ」にある──3層9要素のフレームワークで見極める炎上...
- なーねこ氏・金井氏が示す、若手情シスのキャリア──“社内の何でも屋”から脱却するために必要...
- この記事の著者
-
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
