NTT東日本が約30年来の基幹システムを刷新し、AI変革を加速──現場との一体運営が後押しに
第50回:NTT東日本 執行役員 デジタル革新本部長 CIO 山名紀さん
「私、すごい楽観主義者なんです」と笑うのは、NTT東日本 CIOの山名紀さん。技術職を志して入社したものの、最初の配属は営業だった。転職も考えたが、踏みとどまった先で「現場に育ててもらった」と語る。7年がかりの基幹システム更改をやり遂げ、今はAIファーストカンパニーへの変革を現場とともに進めている。どんな局面でも前を向ける強さは、どこから来るのだろうか。
「辞めなくてよかった」意思に反した営業配属が、強みに
酒井真弓(以下、酒井):大学院では光ファイバーを研究されていたそうですね。
山名紀(以下、山名):ファイバーに使うガラスを作って、レーザーで光学物性を測定する研究をしていました。技術を社会に提供する仕事がしたくてNTT東日本に入社したのですが、最初の配属は営業。正直、違うかなと。
酒井:いや、すごく向いていそうですよ。
山名:自分で言うのもなんですが、営業成績は良い方だったんです。でも、気持ちの奥底が疲れちゃうんです。研究職で「ぜひ」と言ってくださる会社もあったので、1年半ほどで転職しようと考えていました。
酒井:そんなチャンスがあったのに、辞めなかったのはなぜですか?
山名:同じくNTT東日本で働いていた大学の先輩に相談したら、「まだ1年半だし、いずれ一緒に仕事できるかもしれないのを楽しみにしているから、もう少し頑張ってみない?」と引き留めてくれたんです。それと、ちょうど本社の人事面談があって、辞める気満々で好き放題話したのですが、面接官の方が真摯に向き合ってくださって、「2年目、3年目で他の職種に動くチャンスもある」と。それで、もう少し続けようと思いました。
今は本当に辞めなくてよかったと思います。その半年後にサービス企画の部署に異動したとき、2年間お客さまに寄り添ってきた経験が、自信を持って提案する支えになりました。お世話になったお客さまに「こういうサービスはどう思いますか?」とヒアリングさせていただけたのも、営業で培ったつながりがあったからこそです。
現場で感じた社会を支える使命 育ててもらったからこそ「恩返ししたい」
酒井:営業やサービス企画、ネットワーク設備の構築・保守業務など、IT以外の部署を経験したことは、CIOになった今、どんなところに生きていますか?
山名:一番は、現場の人を信じられるところだと思います。私のポリシーは、DXもAIも、トップダウンとボトムアップの両方が必要だということ。ボトムアップで言うと、営業も設備の現場も少しやらせてもらったからこそ、現場がどれだけ頑張っているか分かっています。現場の皆さんに育ててもらったので、恩返ししたいという気持ちが根っこにあるんです。
酒井:育ててもらったと感じるのは、どんな経験からですか?
山名:課長になって初めて、神奈川支店の設備の現場に行ったときのことです。それまで本社にいた私にとって、ネットワークといえば、PowerPoint上で四角い箱を線でつないだネットワーク構成図のことでした。でも現場に行くと、その箱がリアルに目の前に置かれていて、細かいケーブルがびっしり刺さっている。1本抜くのも本当に大変。ギャップを痛感しました。そんな私に、現場の皆さんがとても丁寧に教えてくださったんです。当時のメンバーとは今も毎年旅行に行く仲で、もう15年くらいになりますね。
もう一つは、東日本大震災です。あの日は、たまたま出張で岩手にいたので、翌週の水曜日まで復旧の仕事を一緒にやらせてもらいました。設備のメンバーは、自分の家が大変なことになっているのに、通信を復旧させるために毎日現場に出ていくのです。営業のメンバーもお客さまのために何かできないかと動き、総務が食料やガソリンを調達して、設備や営業の仕事を支えていました。うちの会社は現場あってこそだということを、目の当たりにした出来事ですね。
【御礼】今回で連載50回を迎えました!
【EnterpriseZine編集部より】
いつも連載「酒井真弓の『Enterprise IT Women』訪問記」をお読みいただき、誠にありがとうございます。2022年8月の連載スタートから、ついに本記事で第50回という大きな節目を迎えることができました。ご愛読いただいている読者の皆さま、そして取材にご協力いただきました「Enterprise IT Women」の皆さまに、心より感謝申し上げます。なお、50回を記念して本連載のデザインをリニューアルいたしました。あたたかみと情熱を感じさせるデザインとともに、今後も変革に挑む女性リーダーたちのストーリーをお届けしてまいります。
【ノンフィクションライター 酒井真弓氏のコメント】
おかげさまで、まさかの50回目を迎えました。これまで50人の女性ITリーダーにご登場いただいたことになります。「日本に女性のITリーダーを増やしたい」という思いで始めたこの連載。スタート当初、編集の小山さんは「EnterpriseZineのトップページの半分を女性のサムネイルにする」という目標を密かに掲げていましたね。あれから5年。女性のITリーダー、増えましたよね。ご活躍を耳にすることも増え、実は取材先を探すのも少しだけ楽になったんです。とはいえ、今後の取材先は絶賛募集中です。立候補、お待ちしております!
【取材先募集のお知らせ】
本連載では、IT部門で活躍する女性リーダーを探しています。自薦・他薦は問いませんので、お気軽に編集部にご連絡ください。取材をお願いさせていただく場合は追ってご連絡いたします。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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