プライベートクラウドを実現するためのハードウェア構成
ここで、プライベートクラウドを実現するためのハードウェア構成例を示す(図3)。セキュリティやネットワーク技術に関しては、クラウドではない環境とも共有することになるため、クラウドも含めた新しいルールに沿った環境整備を行う必要がある。また、クラウド環境として用意するストレージ機能としては、提供できるサービスにレベルを付け、コストやパフォーマンスに差をつけるためにも、SANやNASの技術を組み合わせた構成となる。
ストレージでの仮想化、クラウド化に対応する技術も高まってきており、サーバー・ストレージを通して一貫したエンド・ツー・エンドでのアプリケーション性能を制御するQoSの機能を提供することで、より優先度の高い業務に対して、集中してストレージリソースを利用させる事も可能になっている。
最近では、仮想ストレージボリューム機能であるThinProvisioningと、階層化機能を拡張したSmart Tiers により、筐体内階層化管理を自動化し、I/Oアクセスが多いセクションは、高速な階層(Tier)に動的に移動し、また、I/O アクセスが少ないセクションは、低コストな階層に移動させる事が可能となっている。また、災害時に自動または手動で即時にリモートサイトに運用を切り替え、最小のダウンタイムでオンライン業務を継続するリモートクラスタ機能も備えている。
クラウド化に向けた第一歩
これまでに紹介してきたアーキテクチャを参照することにより、既存のITサービスでも機能ごとに分解し、共有可能な部分を小規模なクラウドへ移行することなども可能になる。まずは、自社内に小規模なプライベートクラウドを用意することをお勧めする。自社内でクラウドサービスの運用を行うことで、初めてクラウドの利便性や懸念事項がわかるからである。
すぐにクラウド化に取り組めないとしても、いずれにせよクラウド利用時の認証機能、各種インターフェイスの互換性等のすり合わせのための調査に時間がかかる。また、何よりも人員の意識改革が必要なため、「標準化」「統合化」「プライベートクラウドによる共有サービス」といった段階を踏んで徐々にクラウド環境へ移行していく形になるだろう(図4)。最終的にクラウドを利用しないという選択になった場合も、現在自社がどの位置におり、いつまでにどの状態へ移行していくのかの中長期計画は用意できているかなどを把握する上で、こうしたリファレンス・アーキテクチャは有効である。