求められるのは絶対評価尺度、揺るがない意志が難局を制す
― 宇宙開発予算に対する外部からのシビアな目や「事業仕分け」に象徴される連日のメディアの報道など、当初からすべて好意的というわけではないなか、モチベーションが下がることはなかったのでしょうか。
ええ、まったく(笑)。メディアによって皆さんに知っていただけるのはありがたいことですが、私たちのミッションは“世界初”という誰が見ても明らかな絶対的価値をもっており、それを私たちは信じていましたから、評価される前も後もまったく取り組みの姿勢に変化はありません。科学技術という絶対評価尺度において、これほど確かでオリジナリティのある目標を疑う必要がどこにあるでしょう。
ただ、日本国内の対応については、一抹の寂しさは感じました。私たちの取り組みをニュースとして一番に取り上げるのは、いつも米国のメディアでした。日本のメディアは米国で報道されると追従して報道する。事業仕分けでも同様です。
どうして世界一でなくてはならないのだと仕分け対象になり、帰還した途端に大騒ぎになって予算復活となりました。メディアも政治家も、自分たちの国が行なっている国家的プロジェクトに対して、何をやっているのか、どういう価値があるのか、価値・意義を判断できていない。つまり、絶対評価尺度をもっていないというわけです。そうなれば、価値観もポリシーもなく他者の反応や評価で判断が揺らぐのは当然です。
絶対評価尺度があれば、他者からの評価に動じずに、ポリシーに基づいた判断や行動がとれるはずです。特にリーダーが揺らぐことがなければ、チームは安定し、対外的にも理解を得られるのではないでしょうか。一人の人間としてはもちろん、組織や国としての信頼にもつながっていくのではないかと思います。(次ページへ続く)